お疲れさま〜ユーマ君の場合〜


「あーん!ユーマ君だっこだっこだっこぉぉぉ!!!」



「うぉ!?って…なんだよ花子かよ。」



身長も態度もデカすぎる最愛の腰に後ろから弾丸の様に突撃すれば
一瞬驚いたような声を出されちゃったけれど全く動かずコチラに視線を向けてくれる彼は本当に男前。
そしてそんな男前彼氏に今日はとても甘えたい気分な花子ちゃんは彼の最愛である。




「いやもう花子ちゃん生きるのに疲れた死にたいしんどいお腹空いた眠いだからユーマ君だっこ。」



「最初すげー重い内容だったってーのに最後の方只の餓鬼の駄々っ子みたいになってんぞー。」




そんな意地悪な事を言いながも彼の腰を後ろからガッチリホールドしてる私の体をひょいっと持ち上げて
子供にたかいたかいするような態勢にもっていってくれるけれど私はこんな子供をあやすようなシチュエーションを求めてたわけじゃない。
でも私を抱え上げてニッて笑うユーマ君格好いいからこのままでもいいかも…って本当に単純だなぁ。




「んで?俺の可愛い可愛い雌豚はなんでそんな疲れてんだ?」



「………………ぶひー。」




「ぶはっ!おま……何つー顔して…くくっ」





少しからかい気味に付き合う前よく言われていた呼び名で呼ばれちゃって
不満を前面に出した表情で“雌豚ちゃん”らしく答えれば私をたかいたかいしてる彼は
思いっきり吹き出して、さっきは微動だにさせなかったその体をぶるぶると震わせて笑い続ける。
だってしょうがないじゃない…




私はどこにでもいる雌豚ちゃんじゃなくて
貴方の隣にいる一人の花子ちゃんでいたいんだもの。




「あー……悪かったって花子。そんな頬膨らませんなよふぐみてぇだぞー?」



「…………せめてそこは可愛いハムスターっていってよユーマ君の馬鹿。」



「いやいやお前んな可愛い生き物じゃねー……うおおおお!あば、暴れんな!!落ちる!!悪かったって!!!」




ちょっとは反省してくれたのか、またいつもの呼び方に戻してくれたけれど
私のご不満顔の例えが可愛くなかったのでちょっと抗議すればまた意地悪。
私は今日疲れているっていうのにその仕打ちはないだろうと彼に抱え上げられたまま激しく暴れれば
慌てたユーマ君が落とさないようにぎゅうとお望み通り強く抱きしめてくれて漸く私もご満悦だ。




「ったく、これが望みだったんだろ?あー?」



「………このままベッド行ってぎゅーってしながら添い寝希望」



「へいへい、っと……ホントくっそ我儘だなお前」



そんな意地悪を言いながらもその長い脚がスタスタと彼の寝室に向かっている事実に顔がだらしなく緩む。
ちょっと疲れちゃっただけ…特に決定的なものなんてない。
敢えてあげるとしたら日々の積み重ねってだけ……




ただ、こうして無性に最愛にべたべたに甘えたくなってしまう日がどうしても出てきてしまう。
こんな不安定な感情に彼を付き合わせてしまって申し訳ないなぁとも思う……思うけど。




「いつもお疲れさんな、花子」



「…………うん、」



何も事情も聞かずにこうやって只々私の懇願通り甘やかしてくれる彼にいつだって本当に文字通り「甘えて」しまっていて
いつだって受け入れてくれる男前すぎるユーマ君に胸の締め付けは収まる事を知らなくて、




「ユーマ君、だいすき」



「おー。」



ぎゅうと、自分からも彼に抱き着きながらそう呟けば
間抜けな返事が返ってきたけれど、その声色は酷く暖かで
私の気持さえも全て包み込んでくれている気がして……少しだけ、




少しだけ彼の腕の中で体温を上げてしまったのは私だけのナイショ話だ。




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