ホワイトデー〜カナト君の場合〜


2月14日
私は好きで好きでたまらない最愛にだいすきって想いを沢山込めてチョコを手渡した。
甘いものにうるさい彼の事だから私の手作りチョコなんて受け取ってくれるかなぁと心配だったのだけれど
意外にも彼は…カナト君は小さく「ありがとうございます」って言葉と共に私の手から好きの塊を拾い上げてくれた。





「えへへ〜…幸せだったなぁ」



リビングのソファでにやにやとだらしない表情を浮かべながら先月の出来事に思いを馳せる。
私はカナト君が大好きで、いつだってうるさいですよって怒られてもやめないくらいずっとずっとだいすきって伝え続けているけれど
やはりあの日…バレンタインの日はトクベツで、いつも捧げている好きだって本気だけれど
あの日はそれよりも、もっともっともーっと特別なスキをチョコに込めて差し出したから受け取ってもらえてからと言うもの私はずっとこんな感じだ。




「なんですか花子さん……また気持ち悪い顔をして……不愉快です」



「えー?だってだってカナト君が私のチョコ受け取ってくれたのが嬉しくてたまらないんだもん」



「………まるで僕が普段君のすきを受け取っていないみたいな言い方ですね」



「ううん、違うよ?違うけど……あの日はやっぱり女の子としては特別だからさぁ」




ひょっこり現れたカナト君が私の顔を覗き込んで酷い言葉を紡いでしまったけれど
そんな事で落ち込んでしまっているほど私の精神はヤワではない。
当たり前のようにカナト君の辛辣な言葉をスルーして会話を進めていれば彼はじっと更に私の顔を覗き込んで来てそのままぐいっと腕を掴んでそのままずんずんとどこかへと進んでいく。




「カナト君、どこ行くの?」



「僕の部屋です。…花子さんに渡したいものがあるんです。」



「私に?」




ずんずんとコチラを振り向かずに進むカナト君の背中に問いかければ
やっぱり前を向いたまま、淡々とした答えに私は首を傾げるばかりである。
私に渡したいものって……なんだろう。




そんな事を考えていたらあっという間にカナト君の部屋についてしまって
彼が少しばかり乱暴に扉を開けた先の景色に私は思わず目を見開いた。




「わあぁ…すごいっ!!」



「花子さんからあんな貧相ですが一応チョコを頂いたのでお礼です。……魔界のお店の中から選りすぐってきました」



私の視界に広がる光景はいつもの彼の部屋ではなくて
至る所…それはもう足の踏み場の無いくらい沢山のキャンディーで埋まっていてとても色鮮やかで可愛くてきれい…
いつもおいてる可愛いぬいぐるみ達も相まってそこはまるで御伽の世界から切り取られてきたみたいな景色だった。




「わ、わ!すごいよ!!え、カナト君…これ、全部貰っていいの!?私チョコ一つだけだったのに!!」



彼の言葉にようやく今日が何の日か確信して恐る恐る沢山のキャンディーの中の一つを拾い上げて問うてみれば
カナト君は少しばかり顔を赤くして小さく消え入るような声でつぶやくのだ。




「全部君の為に集めたんだよ…?ホワイトデーに贈るキャンディーの意味はだいすきって言う意味なんでしょう?」



「か、カナトく…っ」



「ねぇ花子さん?いつも君ばかりすきすきすきすき煩いけれど実は僕の方が花子さんの事がすきかもしれないです…このキャンディ達みたいに。」



まさかホワイトデーの贈り物の意味まで知っていてこのお菓子をチョイスしてくれていたなんて思わなくて
思わずこちらまでぶわわと顔を赤くしてしまえばカナト君はそっと私を抱き寄せてちゅっと音をたてて可愛いキスをくれた。
そして部屋一面に散らばっているキャンディに目をやってニッコリ微笑むのだ。




「うーうーうー…負けた…っ!か、カナト君が私を好きすぎてつらい嬉しい幸せっ!!」



「あ、ちょ…花子さん!うわぁ!?」



実は自分ばかりがスキスキだいすきって言葉にしすぎているせいで
もしかしたらカナト君はそこまで私の事好きじゃないのかもしれないってどこかで思っていたので
このプレゼントは私の独りよがりだと思っていたた心を舞い上がらせるには十分…
私は嬉しさのあまり彼の手を思い切り引っ張ってその溢れんばかりのスキの中へと一緒に身を投げ出した。




「カナト君っ!沢山のすきをありがとう!!私も!!私もだーいすきっ!!」



「うう……キャンディの海へ突っ込むなんて痛い…ぐすっ」



「あっあっごめんね!嬉しすぎてつい…!」




がしゃぁと大量にありすぎるキャンディーが私達の体を受け入れるのに無機質な音を立て
その中からひょっこりと二人で顔を出せば私は笑顔満点だけれどカナト君は痛かったのか少し涙目…
慌ててごめんなさいのキスをすれば「今日は特別に許してあげます」って言ってくれたからほっとしてお互いに小さく微笑みあってそのキャンディの海にもう一度今度はゆっくりと体を預けた。



私の特別なスキを捧げた一か月後、
待っていたのは「僕も好きだよ?こんなにたくさん」っていう最愛のとても愛しくてくすぐったいお返しだった。




戻る


ALICE+