ホワイトデー〜スバル君の場合〜


「ん」



「え」




私の目の前には付き合いだして間もない最愛。
銀髪の髪と赤い瞳がとてもきれい。
そしてそんな彼に差し出されてしまったのは彼同様真っ白でふわふわの……




「す、スバル君ひどいよおおおおおおおお!!!!!!」



「は!?なん、なんで泣いて……はぁぁぁぁあ!!!?」




本日3月14日、スバル君との初めてのホワイトデー
私は付き合いだしてあまり日も経たない最愛に
「お前の事が大嫌い」と言う意味の定評があるマシュマロを大量に差し出されてここが外だとか構わずぎゃんぎゃんと大粒の涙を零して泣きわめいてしまった。







「う……ぐすっ……うえっ…うう〜」



「わ、悪かったって言ってんだろ花子……いい加減泣き止め…つか出て来いよ」



ぐずぐずと愛用の枕を抱き締めて私は今最高に傷心中である。
溢れる涙はあれから止まらない…「外」のスバル君は困り果てたような声だけれどもう出ていく気なんて全然起きない。




「うー…スバル君が私の事嫌いだったなんて……こ、こんなに私はだいすきなのに」



「だから知らなかったつってんだろいい加減俺の棺桶から出てきやがれ!!!」



「いやだぁぁぁ!!!私はスバル君に酷い事されて傷ついてるの!!!だからせめて大好きなスバル君の香り一杯のこの空間で癒されるしかないでしょう!?」



「俺に傷つけられた割には俺の事が好きすぎるしその思考回路もキメェよ!!!女版ライトかお前は!!!」



ダンッ!!!と蓋が叩かれたけれど私は断固として出ていく気はない。
先月あれだけ不器用なりに試行錯誤して手作りチョコを好きで好きで仕方ないスバル君に捧げたっていうのに
返ってきたものが「貴女が嫌い」と言う意味のマシュマロなんだよ…?
意味を知ってたとか知らなかったとかそんなのはどうでもいい私は傷付いた!!!





「酷い…知らなかったら事前に調べるでしょこういうの……うぅ、お返しもテキトーでいいやとか思ったからこんなの選んできたんでしょ」



「はぁ!?ちっげぇよ!!!この……が、……で…ら」



「……スバル君?」




そもそもこんな女の子のキャッキャするような行事に詳しいなんて微塵も思ってないけれど
それならそれとして前もって調べてくれても良かったんだ。
なのに事前に調べもしないでコレをよこすって事は彼にとってホワイトデーってそんなに大したことじゃないって事で…
嗚呼、私は頑張って色々調べたり工夫したりしたのになんなの…



棺桶の中で悲しくなってぎゅうと更に枕を強く抱き締めれば
彼の声がどうしてだか途中で聞こえづらくなってきたので不思議に思ってちょっぴり棺桶の蓋を開けて顔を少しだけ出してみるとなんと彼の顔がこれでもかって言う位真っ赤になってしまっていた。




「スバル君?」



「だから………が、………いく、……よ」



「?聞こえないよ…」



「だぁぁぁ!くそっ!!!」




ひょっこり少し顔を出しても彼の声は聞こえなかったのでもう一度と促せば
スバル君はなぜか大きな声で喚き散らしてギロリとコチラを睨みつけてきてしまう。




「だから!このマシュマロが!!花子みたいでふわふわで柔らかくて白くて可愛いからそういう意味とか考える前に気が付いたら買っちまったんだって何度言わせたら気が済むんだボケェ!!!」



「!!!!?」




バタンッ!!!!




やけくその彼の口から出た最高に恥ずかしすぎる今回の失態の理由を聞いてしまえば
私はもう彼以上に顔を赤くしてしまって思わず少しだけ開けていた棺桶の蓋を勢いよく閉じて再び中へと閉じこもってしまった。
え、うそ…す、スバル君…




私の事ふわふわで柔らかくて白くて可愛いって思ってくれてたの!?




「おいコラ花子!!理由話したんだからいい加減出て来い馬鹿!!!」



「やだやだやだ今恥ずかしくてスバル君の顔見れないんだもんっ!」



「はぁ!?そんなの俺の方が恥ずかしいんだから関係ねぇよ出て来い馬鹿花子ー!!!」



「いーやーだぁぁぁ!!!」




ダンダンと棺桶を叩く音が大きくなって今にも壊れちゃいそうだけれど
私は今絶対に外には出れない…
だって本当に恥ずかしいと言うかスバル君がそう思ってくれていた事が嬉しくて嬉しくて
今にも心臓が爆発しちゃいそうなんだ。



「ってここもスバル君の香りがいっぱいでドキドキしてきちゃったどうしようスバル君助けて!!」



「アホかお前は!!!出ろ!!今すぐ出ろ!!!」



「ムリムリムリ!!!だって出たら本人いるんでしょ!?私絶対今顔合わせたらドキドキのしすぎで心臓止まっちゃう無理!!」



記念すべき初めてのホワイトデー…
それは互いに大きな声で喚き散らして棺桶から出る出ないの攻防を続けると言う
花子ちゃん棺桶立てこもり事件として数年引きずられてしまう事となってしまった。




けれど……うん、




「だって普段全然そんな嬉しい事言ってくんないんだもんもう無理突然のデレとか私の心臓持たないってば!!」




スバル君が私の事普段どう思ってくれているのか
予想外の所で判明してしまったからこれはこれでありかなって…思う。



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