骸の上でダンスを
震える君の手を取って
覚束無いその足を優しくリードする
嗚呼、僕は自分で言うのも何だけれど
貴女にとって……花子さんにとってとても優しい紳士だ
「ほら、花子さん……もう少し僕に身体を預けて?そう……イイコ」
「あ、う……カナ、ト……くっ」
優しく花子さんの腰を引き寄せゆったりとステップを踏んでいく
僕が此処までしてあげていると言うのにキミの顔色は真っ青。
ううん、素直じゃない所も可愛いけれど……少しはその可愛い頬を桜色に染めてほしいなぁ
「嗚呼、そうだ……きっと花子さんはもっと激しいダンスが好きなんだね…ほらっ」
「!ひゃ……あ、足…あ、し…に……あ、あ、あ」
きっとこんなに顔色がよくないのは今のステップだと物足りないからだ…
そう思った僕はきっと彼女の好きであろう、少しばかり激しめのステップに切り替えて
足も少しばかり早くリズムを刻む…
本当は緩やかなさっきみたいなリズムが僕は好きなんだけれど、けど僕はとっても優しいから花子さんの好きなリズムに合わせてあげるんだ
けれど彼女の顔色はますます青ざめて涙をボロボロと零すばかり
嗚呼、おかしいなぁ…
きっと君が喜んでくれると思ってこのステージまで用意したと言うのに
ぐちゃり
ぐちゅり
べしゃり
僕達がステップを踏む度聞こえる耳障りのいい肉の音…
ホラ、花子さん……笑って?
こんなにも素敵な舞台を用意した僕を沢山褒めてよ
「や、やだ…カナト君……もうやだよ…っ」
「どうして?ホラ……君を慕ってきた男達の骸の上で踊るダンスなんて最高でしょう?」
二人きりで静かにリズムを刻んで踊る下には数えきれない数の男達の死骸
優しいきみにつけ入ろうとした奴らの末路だ。
花子さんには僕がいると言うのを聞こうとしないんだもの
「ほら、もっと……もっとステップ踏もう?キモチイイでしょう?あはっ、あはは!」
「やだっ、やめ……っ、カナト君っ!!やだぁ!」
ぐちゅぐちゅと屍を踏みつけて踏みつけて踏みつけて…
硬直で硬くなった肉も柔らかくなるを通り越してミンチになっていってとても楽しい…
それが彼女を取ろうとしていたゴミのモノだと思うと尚更気分が高揚して仕方がないのだ
「嗚呼!何度でも……何度でも殺してあげる!君に近付く男は全部全部この僕が!!」
「………っ」
「だから………ね?花子……」
愉しくなってしまって少しばかり大きな声ではしゃいでしまえば
僕に身体を捕らえられて同じく敷き詰められた死体を踏み荒らす彼女の涙はもう止まる事を知らない
嗚呼、酷い…酷いなぁ……僕がこんなにも尽していると言うのに花子さん…君は笑顔のひとつも見せてくれやしない…
けれど、
その泣き顔さえ愛おしいから今はそれで我慢してあげる
ぐしゅっ、と
大きくステップを踏み死肉を派手に撒き散らしてそっと彼女の耳元で甘いオネダリ
ねぇ……きっと君は優しいから、僕のお願い…聞いてくれるよね?
「これ以上誰かの死肉を踏みたくなければ……ずーっと僕の傍に居てよ」
そっと紡がれた僕のささやかな願いは
それから間もなく現実のものとなるのだった
「ん、花子………ほら、ごはんだよ?」
「……………」
僕の行いに精神を削られて、彼女の瞳から光が消えてしまったのは残念だけれど……
それでもこうして彼女が傍に居てくれることが幸せで仕方がないのだ。
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