寝ても覚めても


ねぇこれが全部夢だったらよかったのに…


こうして貴方の腕に抱かれるのも、この冷たい感覚も
キスされた時の胸の高鳴りも繋がれた手の感覚も全部全部…




「夢だったらいいなぁ…」



「花子?」




私のつぶやきの意味が分からなかったのか抱き締める腕に力を込めながら首を傾げる貴方はとても愛おしい。
愛おしさの余り自らキスをすれば少しだけ赤くなって照れているのを隠すようにそっぽを向いてしまった。
ああ、そんなところも大好きよ。



「スバル君とね、こうして一緒に居るのが夢だったらいいなぁって、」



「何でだよ。」




私の言葉が余計理解できなかったのか、彼の眉間に皺が寄ってしまう。
怒った顔だって勿論大好きだけれど、私はスバル君の笑顔の方がもっと好きなんだよね…



「夢だったらねぇ…いつでも会えるもの。」


「花子、意味わかんねぇ」



ぎゅうぎゅうと抱き付いてポロリと小さな弱音。



淋しいの。
貴方がいない空間が酷く寂しくて、いつも涙してしまっている事知らないでしょう?
だからそんなときはせめて夢で会えるようにってお願いするのだけれど
スバル君は酷く意地悪で一度も出てきてくれたことはない。


…だったらもうこの心地いい現実を夢にしてしまって一生目覚めない方がいい。



そしたらずっとずっとスバル君と一緒に居れるもの。




「あー…俺馬鹿だから花子が何を言いてぇのか全然分かんねぇけど。」


「ん、」



ちゅっと可愛い音がして一瞬にして彼がキスをしてくれたのだと認識すれば
私は条件反射の様に顔を赤らめてしまう。



「花子が望むことなら何だってしてやりてぇから、言いたいことがあるならちゃんと言ってくれ」



「俺は馬鹿だから」と、少し照れた口調でそんな台詞はきっと反則で
私はそんな優しい彼にぎゅうぎゅうと縋り付く。



「スバル君がいなくて一人ぼっちの時すごく寂しいの…」



「おう、」



「だからずっとずっと一緒にいて?」



「お、おう…」



私の告白が少し恥ずかしかったのは言葉がどもってしまった彼に小さく声をあげて笑う。
こういう照れ屋さんな所、全然変わらなくてだいすき。



「寝ても覚めても私の視界をスバル君でいっぱいにしてよ」



「んだよ…俺の事好きすぎじゃねぇのか花子は…」



顔は相変わらず赤いくせにまんざらでも無いように笑うスバル君のその顔が眩しくて
私も彼につられて笑えば今度は深く塞がれてしまう唇。
ああ、そのぎらぎらした瞳だってだいすきよ。



「じゃぁ俺の視界も寝ても覚めても花子でいっぱいにしてくれ…俺も、淋しいから」



「ふふ、お揃いだね」



淋しかったのは私だけじゃなかったようで
その事実は酷く嬉しくて、そのまま彼に全体重を預けて二人でベッドの海へと溺れる。
今日はこうして棺桶じゃなく、ベッドで貴方の顔をはっきりと焼き付けて眠りたい気分なの。



「ねぇ、夢にも会に来てね?」


「はぁ?」



彼の素っ頓狂な声を自分の唇で飲み込んで、
名残惜しげに離して微笑めば絡められる指先。
ああ、そう…こうして私を片時も離さないで独りにしないで。



「“寝ても覚めても”スバルくんと一緒がいいの」




ぎゅっと絡められた指に力を込めるとそれに応えるように噛み付かれた唇は
どこまでも冷たく熱くて私のすべてを溶かしてくれる。



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