素敵なしあわせ


咽返る花子の香り。
嗚呼、とても甘い…


紅い海の中泳いでる君は相変わらずとても綺麗で
思わず俺の顔はへにゃりと緩む。


嗚呼、ようやく俺だけのものになってくれたね花子…
だいすきで、いとおしいひと


「ふふ…花子もうれしい?…よかったぁ…」


そっと頬に触れても動かない。
抵抗しないって事は嫌じゃないって事だよね…


「だいじょうぶ…もっと、もっと…近くに居ようね…」


もう離れなし、離さない。
だってやっと手に入れたんだもの。
これから君をたべて、ひとつになって、俺の血と肉になったらもう離れられないよね…


「ねぇ花子、俺は“イジョウ”なんだって」


こうやって、キミを殺したいとか、食べたいとか思う事って…異常、らしいよ。
どうしてかなぁ。大切なものを手に入れたいと思う事も、大好きな人と近くに居たいと思う事も普通なのにね


「きっと、おかしいのは…みんなだね、ふふ…」


だってこんなに愛おしい花子と離れるだなんて考えられないもの。
ちゅっと指先にキスをすれば俺と同じ冷たい身体に胸が高鳴る。
ああ、もう全部全部一緒…お揃いだね



「花子、だいすきだよ…」



ああ、けれど…
きみを食べてしまった後はどうしようか。
俺はもう花子以外の血なんて吸えないのに…


「ねぇ、どうしよう…花子は、どうおもう?」


首を傾けても君は何も答えてはくれない。
どうして…?
ああ、そうか…簡単な答えだから答えてくれないんだね。
俺もすぐにその簡単すぎる答えに辿り着いた。


「そうだ…自分の血で、いいんだ…」


君が混じった自分の血ならきっとおいしいよね。
うん、そうだ…簡単な事だった。



「ふふ、じゃぁ…もっとひとつになろうか…」



花子は動かない、喋らない。
これはきっと肯定だろう。
ああ、うれしいなぁ…花子も俺と一緒の考えだなんて…


「だいすき…あいしてる…」


何も答えない、動かない花子は俺のすべてを肯定してくれていて
それが酷く嬉しくて固くなってしまっている体を抱き締めてキスをする。



「俺ね…こんなにも誰かを好きになったの…はじめて…」



誰かが初恋はかなわないなんて言っていたけれどどうやらそれは嘘のようで…
だって実際俺の初恋はこうして叶ったんだもの。


「嗚呼、しあわせだなぁ」


こうして君の血にまみれて君をこの腕に抱いて
これ以上のシアワセなんてきっと存在しない。



俺はこの世でいちばんのしあわせものだ




「素敵なしあわせをありがとう…」



これで最後と言わんばかりに彼女の唇を塞いで
小さな声で「イタダキマス」と呟いて
俺はようやくだいすきな君とひとつになる。




嗚呼、もうこれで俺と花子はずっと一緒だね



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