トレジャーハンティング
「花子隊長!コチラにはありません!」
「おい花子!こっちにもねぇわ!」
「ベッドのした…にも、ないよ…」
そんな訳ない。
そんな訳ないのだ…絶対、絶対!
「ええい!もっと事細かに探せ弟達よ!!!」
私の叫びがルキ君の部屋中に響き渡る。
そしてそんな部屋の主は何事も無いように上品に椅子に座って相変わらず難しい本を読んでいる。
現在コウ君、ユーマ君、アズサ君と一緒にガサ入れ中である。
事の始まりは数分前。
いつもの如くルキ君に後ろから抱き締められながらみんなで楽しく談笑していたのだが。
「緊縛調教☆」
「メイドモノ!」
「妹モノ…」
「ど、どれもあり得る…!」
話の趣旨がころころ変わるのは通常運転。
突然コウ君が「ルキ君ってさ、どんなエロ本読むんだろ?」っていう素朴な疑問から
彼の好みであるジャンル予想大会が始まったのだ。
いつもの馬鹿げた会話内容に真面目にリアクションをしていればルキ君は呆れたようにため息。
けれどわたしは真剣である。
だってこれはルキ君がどんなジャンルがお好みか知るチャンスだ!
これを参考にすればルキ君はもっと私にメロメロに!!
そんな事を考えてもぞもぞと彼の腕の中で移動して向かい合いの体勢になって本人に直接尋問。
「で?ルキ君はどのジャンルのエロ本を持ってるの?」
「全く…くだらない。」
呆れきったルキ君がまた溜息。
そしてとんでもない一言を言い放ったのだ。
「そんなに気になるのならば自分で探してみてはどうだ?」
…そして現在に至る。
至るのだが、
「ま、まさかここまで探しても見つからないだなんて…!」
そう、これだけ色々探しているのに一向にエロ本の類が出てこないのである。
エロ本どころかAVビデオも官能小説ひとつも出てこない。
まさか携帯で厭らしいサイト見てるんじゃないのかと思ってさっき携帯を見せてもらったけれどそう言った履歴も全然なかった。
「ま、まさかルキ君って不能…?」
「おい、花子。」
私の言葉に対して地を這うような低い声で答えたルキ君はすんごく怖い。
あ、うんごめんなさい不能とか言い過ぎましたごめんなさいだからどうか壁に追い詰めるのだけはやめてください
凄い怖いしイケメンの顔が近すぎてドキドキで死にそうです。
けれどルキ君はそんな私の考えなんかお構いなしだ。
「生憎花子の味を知ってしまってから他はどうでもよくなってしまってな…」
「う、うわあああああ」
な、何て恥ずかし過ぎることを言い出すんですか参謀様!
もうそんな事いうならいっそ不能の方がよかった。
恥ずかし過ぎて今ならそのまま死んでしまいそう…
ルキくんは真っ赤になってしまった私を見てすごく悪い顔をしてわらった。
「嗚呼、けれど…」
「な、何…?」
壁に追い詰められたままガッシリと肩を掴まれて逃げられないように確保されてしまって
私に無慈悲な死刑宣告が告げられる。
「花子の妹口調のメイド姿を縛って調教するのならば…悪くない」
「悪い悪すぎます勘弁してくださいよホントごめんなさい」
さっきの弟達の勝手なルキ君のフェチ予想をすべて詰め込んだマニアックプレイの強要にもう私はすんごい冷や汗である。
アレだ、多分あの時「ルキ君はそんなの読まないもん!」とか否定しなかったからルキ君すんごく怒ってるんだ。
まずい、コレは確実に食べられてしまうパターンだ。
どうにかこの状況を打破しようと弟達に助けを求める為視線を泳がしてみるけれど
いつの間にか彼らの姿はなく、その代わりにどうしてかクラシックの可愛らしいメイド服と麻縄が置いてあった。
…おい、どういうことだ。
唖然としてしまった私にルキ君はすっごく優しく微笑んだ。
「兄想いの弟達を持って俺は幸せ者だな」
「お兄さんの下半身事情を想っている弟達なんて滅びればいい!」
必死に逃げようとじたばた暴れるけれど全然効果がなくて
それどころか「喧しい」と言って唇を塞がれてしまってはもう抵抗する気さえも殺されてしまう。
「さぁ花子、俺が不能ではない事をその体に教えてやろう」
「や、うん。知ってる。すんごい知ってる。知ってるから私の事逃がしてあげない?」
有無を言わさず抱き抱えられてそのままベッドへと放り出されてしまう。
そしてそのまま覆いかぶさった彼はどうしようもなく妖艶だ。
「逃がす?ようやく手に入れた花子をか?…貴様は俺に最愛を手放せと、そんな鬼のような事を言うのか」
「…やだ、やめてよそう言う事いうの。…逃げれなくなる。」
「逃がすわけがないだろう…馬鹿、」
どうしようもない口説き文句は易々と私の乙女脳を満足させるのに十分で
ああ、今夜は究極のマニアックプレイで抱かれてしまうのかなんて呑気に彼のお仕置きを受け入れてしまう単純すぎる思考回路をどうにかしたい。
観念して本日も私は彼のお好み通りに抱かれるのだ。
後日、お仕置きとして弟達のお宝(エロ本達)が食卓に綺麗に並べられてしまい
もう二度とルキ君にこういった類のお話をふるのはやめようと三兄弟と私でむせび泣いたのはまた別の話。
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