trick or trick
「アズサ君!トリックオアトリック!!!」
「させるか野獣!」
ごすっ!
今日も今日とて最愛小悪魔天使ちゃんのアズサ君にぎゅって抱き付けば
上から降って来た辞書クラスの本の角。
私はコイツを一度泣かさないと彼と…アズサ君とのいちゃいちゃタイムを最初からキめる事が出来ないのかもしれない。
「ちょっと!もう私とアズサ君は公認カップルなんだから一々邪魔しないでくれるルキ君!」
「やかましい!!公認だろうが非公式だろうが弟の体を守るのが兄の役目だ!!トリートオアトリートにしろ野獣!!」
「私はアズサ君に悪戯しかしたくない!!」
ぎゃんぎゃんと、取っ組み合いの喧嘩になりながらアズサ君のややこしいお兄ちゃんと睨み合いである。
全く…もう私とアズサ君は結ばれてる仲なんだからいい加減諦めろって言うのよ!!!
小悪魔天使をいい加減私に渡しなさいよ!!
「花子…さん、俺も…」
「ああん!アズサ君構ってもらえなくて寂しかったの!?孤独なうさぎちゃんなの!?アズサ君が淋しさで死んじゃわないように今以上にくっついてるからね!?」
「ふふ…ありがとう…だいすき。」
ルキ君と大ゲンカをしていたら後ろからふわりと何かが私のからだを包み込んで耳元で淋し気な言葉。
瞬間、さっきまで取っ組み合いをしていたその手をきゅっと優しく彼の背中に回して放ったらかしにしてごめんねの気持ちを沢山込めて
その私より少しだけ広い背中を高速で撫でまわすとくすぐったかったのか小さな笑い声が聞こえてもはや私は大興奮である。
「あず、アズサ君!ほら!トリック!!トリックしよう!?今すぐに!!」
「花子さん…オア…抜けてる…可愛い…どじっこ…」
「あああどじっこ!!私どじっこだね!!こんな可愛いどじっこ花子ちゃんを抱いてみたいと思わないかなアズサ君!!!」
アズサ君に抱き付いたまま全体重を彼に全力でかけてそのまま押し倒してしまう。
すると私の下で一瞬きょとんとしていたけれどすぐにふわりと嬉しそうな笑顔に変わっちゃうアズサ君は紛れもない天使だ。
「花子さん…だめ…これじゃぁ…逆…だから、」
「だってだってアズサ君お菓子持ってないよね!?持ってないでしょ!?だから仕方ないんだよ私にこうされるのはしかたな、んむっ」
言葉は咎めるものだけれど子の声色はどこまでも優しくて嬉しそうなので
私の興奮はますますヒートアップしてしまうけれどそんな大暴走してしまってる唇に不意にもふっと甘い何か。
ぐいっと彼の細い指がソレを押し付けるので反射的に口を開けてみるとその甘さはじわりと広がって表情が思わず緩む。
「コットンキャンディ?」
「うん…今日は…ハロウィン…だから…魔除けに…ってルキが…ふふっ」
「ルキくんんんんん!!!!」
広がった甘みの正体はコットンキャンディー。
悪戯が成功したみたいに微笑むアズサ君は可愛すぎるけれどこれで彼に悪戯できる名目を潰された怒りは一直線に鬼参謀へと向けられる。
ギロリと先程放置した彼を睨むとソファで勝ち誇ったドヤ顔で見下されたのでもう今度本棚ごと全部灰にしてやろうと思う。
ギリギリと怒りの余り歯を鳴らしていれば急に視界がぐるりと反転してしまい思考が追い付かなかった。
気が付けば目の前にはアズサ君。
そして彼の背景は先程の床ではなくどうしてだか天井で…
「……あれ?」
「花子さんは…俺に悪戯する事ばかりかんがえてて…もってないよね?…おかし。」
ゆるゆると私の頬を撫でながらそんな事言っちゃうアズサ君にもう私の顔はでれでれだ。
少し離れたところで長すぎる溜息の後パタリと扉が開いて閉じた気がしたけれど
まぁ気を利かせてくれた某参謀の本棚、今回だけは見逃してあげようと思う。
「ふふ…花子さん…嬉しそう…そんなに俺に悪戯…されるの、嬉しいの?」
私の表情でどれだけこれからの事を期待しちゃってるのか察した彼がちゅっと指先にキスをくれたので
もう我慢の限界を迎えた私は彼の首に手を回してそのまま勢いよく自分へと引き寄せた。
「勿論だよ!アズサ君、私にトリック以外しないでね!!」
最高に愛されるハロウィン…なんて素晴らしい!!!
さてさて、トリートとは何だったのだろうかそんなの知らない。
あ、もしかして辛いの大好きなのに最高に私に甘いお菓子みたいなアズサ君の事かな?
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