かわいいきみ


「さて、晴れてアズサ君とお揃いになった訳なのであとはヤることは一つだと思うの。」



「ちょっと待てちょっと待てちょっと待て野獣貴様何を考えているんだここには俺がいるだろう。」



「いやもう今日は見てていいよ。」



ようやく…ようやく、苦しい苦しい覚醒を乗り切ってアズサ君と同じ吸血鬼になれた最高に幸せな初日。



この幸福感を今私の下できょとんとしてる天使であり小悪魔ちゃんなアズサ君にも感じてもらいたくて早速頂こうと服の中に手を這わせたin無神家リビング。



なんかすごく小姑みたいな声が聞こえたので視線も欲情もアズサ君に一点集中しっぱなしのまま冷たく言い放てばゴスッと鈍い音が響いてぐらりと私の視界が揺れた。




「いいいいったぁぁぁ!!!?ちょっと何するのルキ君!せっかくの私とアズサ君のお揃い種族記念日初夜を邪魔しないで!!」



「やかましい!!皆が共同で使うリビングで盛るな野獣!!せめてどちらかの部屋で…」



「今夜は見せつけていくスタイル!!」



「女の貴様が言う言葉じゃないだろう!!」




ゴスゴスゴス
彼の心の狭すぎる文句に反論するたびに何度も頭に打ちつけられてしまう彼の愛読書。
く、くそう!!今度また本全部燃やしてやる!



ていうかそもそも可愛い可愛い末っ子の最愛がようやく共に永遠を過ごせる体になったんだから
記念に見ていってもいいと思うというか正直お兄ちゃんに見られて恥ずかしがっちゃうアズサ君が見たいだけだけども。




胸の内でルキ君の本への殺意をふつふつと育てていれば
したからぬっと二本の腕が私の首に絡みついてぐいっと引っ張ってきた。



瞬間、私の大好きで大好きでたまらない彼の笑顔が視界いっぱいに広がってあっという間に自分の表情がでろでろと情けなく緩むのを感じてしまう。



「ああん!アズサ君!!アズサ君も今日は乗り気なの!?いいよね!!羞恥プレイ!!かわいくなっちゃうもんね!アズサ君が!!」



「ふふ…花子さん…ごきげん…俺も…嬉しい。」



スリスリスリとノリ気な彼の態度に感激して胸板に顔を沢山こすりつければ
くすぐったかったのか小さな笑い声が響いてもはや理性はなかったことになる。




勢いよく小姑参謀を先程とは比べ物にならない位に睨みつければ二三歩後退してしまう位今の私は無敵だ。




「…いや、せめて俺は出ていく。」



「羞恥プレイ。」



「………、」



「花子…さん、」




吸血鬼になりたての私の威圧にたじろぐルキ君に気をよくしてその場に居ろと無言の圧力で迫れば
下から包み込むようなか優しい声色。
もう一度彼に視線を戻せば彼は困ったように笑ってた。




「俺…花子さんの好きな事してあげたい…けど、可愛い花子さんは…俺だけのものにしたいな…なんて…」



「あ…あず…あず…あず、」



「わがまま……かなぁ?」



綺麗な眉を少しばかり下げて首はくたりと傾げられてしまう。
ねぇねぇアズサ君それ、計算だったらもう小悪魔どころじゃない。
いっそ大魔王だからね。



「行こう!アズサ君のお部屋行こう!!そんでアズサ君だけが可愛い私を独占していいよ!!」



「ふふ…ありがとう花子さん…だいすき」



「ああん!もう一回!!もう一回ってアズサ君ボイスレコーダーに録音して毎晩寝る前に聞いちゃいたい!!」



可愛すぎる彼の態度にもうあっさりと公開プレイをあきらめて
そのままぎゅうと彼に抱き着けば意外に力持ちな彼はそのまま私を抱き締めて普通に起き上がった。
そして小さく笑ってスタスタとアズサ君のお部屋へと直行である。



ああもう!
私!!私って本当にチョロい!!




でもでもこんなに可愛い我儘言われたら従わざるを得ないというか
従わない大馬鹿野郎とかこの世の存在しないと思うね!うん!!



「アズサ君!アズサ君!!今日はねいつもよりもーっと可愛い私を見せてあげるっ!!」



「ほんとう…?ふふ…たのしみ、」



きゃっきゃと彼の腕ではしゃぎながらちゅっとあふれ出した愛おしさの勢いのまま
頬に軽く唇を落とせばアズサ君はとても嬉しそうに笑ってくれる。




「私も最高に可愛いけど、アズサ君はもーっと可愛い!!やっぱ天使!!」



パタリと後ろ手に閉じられたリビングの扉の向こう側から
「可愛らしい野獣とは」
なんてとんでもない失礼な声が聞こえたので大好きなアズサ君に可愛い私をささげた後は
吸血鬼というよりかはもう私が魔王になっちゃおうと、心の中で燃やし尽くす予定の小姑参謀の愛読書の冊数を数えた。




「アズサ君、アズサ君たっくさーん可愛がってね!!可愛い私を!!」



元気いっぱいなその言葉はふわふわのベッドシーツの中、しあわせに溶けて消えた。



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