隠し事の報復
「魔界でユイたそと王様ゲームしたらしいじゃないコウ君なんて羨ましいという事で王様は永遠に私のターンで開始するね。」
「つっこむ所が満載だからもうつっこまないでおこうか花子ちゃん」
「え?じらしプレイ?コウ君のくせに生意気突っ込んであげてよ厭らしい。」
俺は今机の前、数個ある椅子の一つに座らせてすごく顔を引き攣らせている。
ばれた…一番ばれちゃいけない人間に魔界でのお遊びがばれてしまった。
顔を引き攣らせながら俺の体は小刻みに震えてしまっている。
すわってる…花子ちゃんがすわってるのだ…あの、体がじゃなくて目が…目がすわってる…怖い!!!
恐らくそんな楽しいことをしたって事実を隠してたことにご立腹なのだろうが…
あの…怖い。マジ怖いからその目!なんなの彼氏である俺の事ホントぼっこぼこにしそうなくらい睨んでるし
いや…いつも大体ボコボコにされてはいるけれど。
「まぁいいじゃないかコウ。花子だって少し王様ゲームしたら気が済むんだろう?」
「いやいやいや普通に席に座ってますけど断ってもいいと思いますよ!カールハインツ様!!」
困ったように微笑んで俺の宥めちゃう本物の王様に対して
バンバンと机を叩いて反論するけれど「まぁまぁ」と穏やかな返事しか返ってこない。
器広すぎるにも程がありますよカールハインツ様!!仕事!仕事じゃないけれど仕事選んでください王様!!
「いいからとっとと始めろよ眠い…」
「ああん!シュウ様ごめんなさい!!私の彼氏に順応性がなくて時間取っちゃいました!!」
「一番!一番ツッコミたいのはそこだからね!!なんでシュウ君が花子ちゃんの膝の上で寝てるんだよ彼氏は俺だつってんでしょ!!」
「いやほら今日私王様なんで。王様って確か天使膝の上に乗せる権利あった気しかしない。」
「そんな権利あってたまるか!!!」
俺の最愛である花子ちゃんの膝の上に真顔で座っているシュウ君に対して我慢しきれずに喚き散らしたけれど
花子ちゃんはさも当然のように頭悪い事しか言わないしカールハインツ様はひたすらに穏やかに笑うばかり。
……こ、ここにツッコミはもしかしなくても俺だけ!?
る、ルキ君!せめてルキ君が欲しい!!
ぐっと唇をかみしめていればそんな俺を無視して花子ちゃんの「王様わーたしっ」と間抜けな声が響き渡る。
…事前にひかされたくじをチラリと見つめる。
今回は参加人数が少ない…ひっじょーに少ない。
この少人数制は紛れもなく王様ゲームという名の俺へのお仕置きなのだろう。
だから参加人数を少なくして出来る限り無茶ぶりを俺へと割り当てる気だ。
くそう!!こんなことになるなら隠せずに王様ゲームした次の日くらいにちゃんと話せばよかった!!
だってしゃべったら自分もやりたいって言いそうだったんだもん!!
腐女子である彼女混ぜて王様ゲームとか嫌な予感しかしないし!!
…まぁ結果的にずっと彼女が王様というとんでもない最悪の結果になってしまった訳だけれど。
「1番と3番が甘くあまーく絡む。」
「え、」
「………だっる」
彼女の口からやっぱり出てきちゃった花子ちゃん以外男しかいないにもかかわらずそんな気色悪い命令。
じっとくじの先の番号を見れば俺が1番。
そして彼女の膝の上で舌打ちが聞こえたのでこれは…あの…ええと
「いやだぁぁぁあ!よりにもよって!!よりにもよって最大のライバルのシュウ君と絡むとか死んでもいやだぁぁぁ!!!」
「はぁ?何が最大のライバルだコウが俺に勝てたことなんて一度でもあったかよ雑魚。」
「ないね!残念な事に俺の彼女が大天使サカマキエルが大好きだからね!!でもそれ言っちゃう!?言っちゃうかな!!俺が可哀想!!!」
この最悪すぎる組み合わせに再度考え直しを要求するけれど
シュウ君がため息混じりに酷く悲しくて残酷な現実を叩きつけてきちゃうものだからぶわわと涙が浮かんでしまう。
のそのそと花子ちゃんの膝の上から降りたシュウ君はそのままガシリと俺の腕を掴んでくたりと再度彼女の方へと向き爆弾発言。
「ええと、シュウコウ?コウシュウ?…どっち」
「ちょっとちょっと待って待ってシュウ君なんでそんなカップリング名さらっと言っちゃって…てか抵抗!抵抗しようよ!!俺とか絡んじゃうんだよ!?しかも甘く!!」
「俺は早くこの茶番が終わるならなんだってする。」
「正論!?正論かなそれ!?あ、ちょ、花子ちゃんそんなシュウコウでの願いしますとかカンペ広げないであ、ちょ…まっ」
……
「…うん、シュウの彼氏力って結構すごいんだね。今後の参考にしようかな。」
「そんな今更ですよカールハインツ様シュウ様ってすっごく素敵な大天使おおっと新刊のネームが68ページ超えたご褒美。」
「うぅ…どうしよう、俺がシュウ君に娶られちゃう。」
あれから数時間それは…それはもう甘くあまーく俺と絡んじゃったシュウ君は疲れたのかもう床で夢の中だ。
むかつくけどシュウ君が花子ちゃんに様付けされてる理由が分かりすぎちゃって辛い。
明日から俺もシュウ様って呼んじゃいそうだよシュウ君マジイケメン。
「さて、王様ゲーム続けるよ。」
「えぇ!?で、でももうシュウ君寝ちゃってるからえっと」
「王様わーたしっ!」
「俺の!俺の話を聞いて花子ちゃん!!!」
既に一人夢の世界に堕ちてしまったのでもう王様ゲーム成立しないんじゃないのかと
彼女に訴えても完全無視で話しが進められてしまう。
怒ってる!?花子ちゃん実は予想以上に怒ってるの!?
だから俺の話全部無視しちゃうの!?
もう何を言っても聞いてくれない彼女にいわれるがまま再度くじを引いた。
「ええと、3番が私と2番にお揃いを捧げる。」
「………、」
「おやおや花子…もしかしてズルでもしてるのかな?」
彼女の言葉にクスクスと静かに微笑んだ3番がくじをひらひらと振りながら花子ちゃんを見つめる。
そんな視線に彼女はいたずらっ子のように微笑んだ。
あ、かわいい。
…いやいや可愛いわけあるかいたずらっ子っていうかこれもはやあれだよゲス顔って奴じゃん。
俺はちょっと花子ちゃんと一緒に居る時間が長すぎたようで彼女なら何でも可愛く見れちゃう病気にかかってしまっているようだ
目を醒ませ俺!!
そんな俺をよそ目に三番…もとい吸血鬼界の王様はうんうんと王様と二番…俺とのお揃いを考える。
そして数秒後、何かいい案が思いついたのかぱぁと可愛らしい笑顔で微笑んじゃう彼はもはや受け…いやいやいや何考えてんの俺!!
俺は腐ってない…断じて、断じてだ!!
「そうだ。花子の片目をコウとお揃いにしよう。」
「は?」
「ええと、ちょっと待っておくれ」
ぶっ飛んだ提案と素っ頓狂な俺の声が響いたけれど
そんなの気にしないといった感じでごそごそと懐を漁りだすカールハインツ様に滝汗しか出ない。
あの、その…魔眼…そんな胸ポケットにいつも常備してるんですかなにそれ軽くホラー。
数秒そんな行動を見守っていれば次第に端正なお顔が残念そうなものへとなっていくので俺は少しばかり安堵する。
や、だってコレをお揃いはちょっとさすがに…
しかしそんな俺の安心をよそに彼がふるふると震えながら差し出したものに思わず吹き出してしまう。
「ええと、スーパーボールならあったけど…どうしよう。」
「んー…じゃぁ赤いのでいいですよ。」
「いいですよ、じゃないよ!!グロい!!無理だよ!!スーパーボール埋め込む気!?正気!?怖い!!」
カールハインツ様のボケか本気か分からない言葉に全力で乗っちゃった花子ちゃんに今日一番の大きな声で喚き散らした。
怖いって!ていうか何でスーパーボールとか持ってるのカールハインツ様!!それ何に使うつもりだったんですか!!
結局その日はそのままお開きになって
なんだか俺とシュウ君の絡み損みたいになってしまった…
けれど、
「う、うぅ…今回の新刊はシュウコウでーす…」
次のコミケはお約束通り王様ゲームの時、絡んだ構図をフル活用した新刊が出ちゃったわけで…
しかもあの後個人的王様ゲームとか訳の分からない独裁罰ゲームの名の元、その新刊をモデルである俺自ら売り子をするという何ともまぁとんでもない羞恥プレイを食らう羽目になってしまった。
…今度からは王様ゲームみたいな楽しい類の事で遊んだら
真っ先に花子ちゃんに報告しよう。
恋人同士の間に隠し事は身の破滅を招くのだと…
馬鹿な俺は今回痛いほど思い知った。
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