恥じらいハニィ
「俺はレイジ君に対する好感度が非常に上がってるので友情エンドとか出してもいいと思ってるよ。」
「何を訳のわからない事を言っているんですか。」
ブルブルと震えながら小さな小瓶をレイジ君から受け取って感謝の言葉を表せば呆れかえった彼から溜息とデコピンを喰らってしまう。
そう…いつだって「嫁にしたい吸血鬼ナンバーワン」として花子ちゃんに追いかけまわされているレイジ君をことごとく身を挺して守ってきてあげてるお礼として一つの薬を貰ってしまったのだ。
「飲んだら誰もが恥ずかしがり屋になってしまう薬とかマニアック…でもイイ!恥じらい乙女な花子ちゃん…イイ!」
ウキウキと弾んだ声でどばどばと加減なしに彼からもらった薬を花子ちゃんが飲むジュースにいれる。
レイジ君よく薬とか沢山作ってるけどまさかこんな夢のような薬をくれるなんて…
日頃いい事してたらやっぱ返って来るものなんだねぇ…なんて。
ぶっちゃけ花子ちゃんがレイジ君にハァハァしてるのが気に食わないから庇ってるだけだけどね。
「はーい花子ちゃん!ジュースどうぞ〜?すっごく…すっごく美味しいよ?」
「何コウ君…なんか入れたの?そんなニヤニヤして。媚薬的なあれ?」
「……そんなの入れる訳ないでしょ?ていうか入れたとしても花子ちゃんには効く気しないよ。」
相変わらずホモ本製作の修羅場中な彼女にそのヘンテコな薬たっぷりジュースを差し出すと
一秒もしないうちに薬の種類は違うけれど見抜かれてしまい一瞬動揺したけれど、そこは皆のスーパーアイドル無神コウ君だ。
研ぎ澄まされた抜群の演技力でカバーして彼女の警戒を解いてやる。
ふふふ…今これ程までにドラマとか色々出てよかったと思った事はないよ!
「まぁ丁度濡れ場もひと段落ついたし休憩しよーっと。ありがとうコウ君。」
「どういたしまして…って、また今回も酷いね。」
俺の手からジュースを受け取ってくれた彼女の原稿にチラリと目線をやれば
今回も身近な吸血鬼が同じく身近な吸血鬼に喘がされていたのでげんなりである。
しかも無駄に画力あるから攻めは最高に格好いいし受けは最高に可愛いく描かれてる。
…ちょっとホモ本だけどこれだけ愛情込めて花子ちゃんに描かれちゃってるこいつ等に嫉妬。
そんな事を考えながらも再び花子ちゃんへと視線を戻す。
するとすでにレイジ君の薬入りのジュースを全部飲み干しちゃってたのでニヤリと悪い顔。
…いやいやいやいや普段の逆巻さん逆巻さんホモホモ煩い花子ちゃんも大好きだし愛してるよ?
でも…でもたまには…たまにはノーマルのはずかしがり乙女な花子ちゃんだって見てみたいじゃないか!!!
じっと彼女の反応が変わるのを待てば花子ちゃんがチラリと先程までガリガリとかきなぐってた自身の濡れ場原稿に目をやって瞬時にぼふんと顔を赤くした。
やった!効いた!!効いてるコレ!!!
ついに俺の時代がやってきましたよ皆!!!
「ひゃ…ひゃぁ!何コレ…や、やだ…えっち!えっちだ!!」
「あああああ花子ちゃんが可愛い!!!!」
さっきまで自分が描いてたくせにその原稿を見て真っ赤になった顔を両手で隠してじたじたしちゃう花子ちゃんを見て俺もじたじたしちゃう。
な、なにこの破壊力!恥じらい花子ちゃん可愛すぎかな!?
「あ、あ…こ。コウ君…どうしよう…この部屋…た、沢山恥ずかしい原稿ある…や、やだよぅ…」
「そうだねぇぇぇ!!!やだよねぇぇぇ!!!俺の部屋行こうか花子ちゃぁぁぁん!!!」
本当に恥ずかしかったのかぷるぷる震える手で俺に必死に縋りついて
羞恥で涙が浮かんじゃった花子ちゃんが俺を見上げてこの部屋にいたくないと懇願するから何かもう俺の中の俺が大歓喜で祭り開いてる。
可愛い…花子ちゃんが可愛すぎてどうにかなっちゃいそうていうかどうにかなってる。
余りにも卑猥すぎる原稿に腰抜かしちゃって立てない彼女をお姫様抱っこしてあげて一目散に俺の部屋へと向かうけど…
腰抜かすほどエロい原稿描いてたのは紛れもなく君なんだからね?とツッコミたくて仕方がない。
でもそんなの今の恥じらい花子ちゃんに言っちゃったら本気で泣いちゃいそうだから絶対に言わないけれど。
「はーいとうちゃーく。…ってどうしたの花子ちゃん。」
「だ、だ、だって…こんな、コウ君にお姫様抱っこ…あ、あぅ…」
「やばい死ぬ俺しんじゃう。花子ちゃんが可愛すぎてもうなんか心臓ないけど心臓破裂する。」
いつもは俺がお姫様抱っこしようが迫ろうが全く何も感動しないくせに
今俺の腕の中の彼女はさっきよりもっと真っ赤でよっぽど恥ずかしいのか俺と目も合わせてくれない。
ただひたすらにぷるぷると震えながら「ひゃぁ…」って可愛い声を出すばかりである。
「よいしょっと…はぁ、これで暫くは花子ちゃんもホモホモ逆巻さん逆巻さん言わないんだねぇ〜」
「え?」
「え?」
恥じらい花子ちゃんをそっとベッドに降ろしてしみじみとした俺の言葉にこてんと首を傾げちゃう花子ちゃんに俺も一緒に首を傾げる。
え?…「え?」って何花子ちゃん。
だって今の花子ちゃんは恥ずかしがりやさんでしょ?だったらホモとかそんなの…
なんて思ってたら彼女はぽぽぽって頬をまた赤く染めながらふにゃりと柔らかい笑顔で爆弾発言。
「だってだって男性同士の恋愛って素敵だと思わない?禁断って感じ…只ひたすらに想い合って通じたときなんてもう感動しちゃう。」
「え、ちょっと待って花子ちゃんあれ?」
「そこに体を求めあうなんてそんな無粋なものは必要ないと思うの。只傍にいて手をつないで抱き締め合う…それだけで二人は満たされ…嗚呼、素敵」
「う、う、うわぁぁぁぁぁぁ」
夢見る乙女みたいにキャッキャとはしゃぎながら語ってるけど内容は紛れもないホモだ。
しかもスーパープラトニックラブホモである。
恥ずかしがり屋さんになっちゃったからそういう濡れ場は大の苦手になったけれど
今度はプラトニックホモ至上主義になってしまったようでそれはそれで恥ずかしい…というかこっちの方が何か耽美妄想され過ぎてて恥ずかしい!!!!
「初めてのお友達…そんなコウ君に次第に抱いてしまう恋心にスバル君は罪悪感を抱きながらも思いは止められず…遂にコウ君に告白を…嗚呼、」
「げ、げ、解毒剤!!!レイジ君今すぐ解毒剤ー!!!!」
ぽわぽわと周りにお花でも咲いちゃうんじゃないかと思うくらい可愛らしくスバル君×俺の話をしだしたから慌てて携帯取りだしてレイジ君に解毒剤を持ってくるように懇願する。
やばい!今の恥じらい花子ちゃんから語られるホモはとんでも無く可愛すぎて恥ずかしい!!
なんかもう…うん!俺がカップリングに混ざっちゃってるのにスバル君応援したくなっちゃうし、彼女の妄想の中の俺もちゃんとスバル君の想い受け入れろよとか思っちゃう!!
やばい!
プラトニックホモ思考回路危ない!!!!
恥ずかしがり屋の花子ちゃんは可愛いけれど
やっぱり根本的なホモ脳は変わらなかったみたいで…
いつものエロエロ大歓迎うひゃうひゃよりもこっちっがすっごく恥ずかしくなっちゃうような妄想が口から溢れて止まらなくてもう俺の思考回路も限界である。
「早く!レイジ君早く来て!でないと俺もう、スバル君と俺が幸せになればいいっておもっちゃうよー!!!!」
そんな虚し過ぎる俺の断末魔が響き渡って
何事だとルキ君が駆けつけてくれたけれど、たれ流れる花子ちゃんの妄想の被害に遭ってしまって二人で泣きながら
「スバルとコウは幸せになるべき」
とか訳のわからない事を言ってしまったのはまた別の話。
やっぱり花子ちゃんはいつもの花子ちゃんが一番いい。
もしくはその根本のホモ脳をノーマル脳に治す薬をレイジ君に土下座して作ってもらうか。
もうその二択である。
恥じらい花子ちゃん…
本当に恐ろしかった。
あ、スバコウは幸せになってください俺応援してる。
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