48:誕生日プレゼント
「ユーマ君、アズサ君…俺達はどうやら軽率過ぎたようだよ…」
「くっそ、まさかこんな事になるなんて…っ!」
「どうしよう…」
「や、普通でいいと思うのですが…」
無神家弟さん三人組が揃って頭を抱えて唸っている。
そして私はそんな彼等をみて苦笑してしまう。
本当に愛されてるなぁ…ルキさん。
「普通じゃだめだよ!折角今回は花子ちゃんもいるんだからこう…思い出に残るルキ君の誕生日したいんだもん!」
「なのにもう既に「花子をプレゼント★」はやっちまってる!!くそう!考えなしだったぜ!!」
「もういっそ花子が…はだかで…ルキをさそ…」
「やりませんよ何言ってくれるんですかアズサさん、そしてコウさんもユーマさんもそんな期待で満ちた瞳で見ないでください困ります。」
そう、後数日後にはルキさんのお誕生日らしい。
そしてそんな彼にどうしても心に残るプレゼントがしたいとさっきから無神家弟会議が広げられているのだけれど
どうしてだか全て私がらみなのだ。
「あ、あの別に私を無理矢理入れなくてもこう…普通のプレゼントでいいのでは?」
私の言葉に同時にこちらを向いた彼らが一斉に大きな溜息を吐いてしまう。
え、私何かいけない事を言ってしまっただろうか…
「あのねぇ…ルキ君が喜ぶ事って言ったらぜーんぶ花子ちゃんが絡むの!」
「そうだぜ?ちったー愛されてる自覚しやがれバーカ。」
「だから…やっぱり花子を…プレゼント、したいなぁ…」
口々に出てくる言葉はどれだけ私がルキさんに愛されているかと言う事ばかりで
もうなんというか恥ずかしいけれど…それ以前にすごく嬉しくて
なんだかぎゅっと胸が痛くなる。
私だって…わたしだってルキさんが好き。
だからやっぱり彼のお誕生日プレゼント…特別なものを送りたい、かも。
「んもう!ホントどうしよう!早くルキ君の誕生日プレゼント決めちゃわないと!!」
「は?俺の誕生日プレゼント…?」
『!!!!?』
珍しい素っ頓狂な声に思わず4人一斉に勢いよく振り返れば
先程までカールハインツ様の所へ行っていたはずのルキさんが驚いたような顔をしてビクリと体を揺らしてしまった。
ああああ最悪だ…誕生日プレゼント以前に全てルキさんにばれてしまった。
「あーもう!いいや!ルキ君っ、誕生日プレゼント、何がいい!?俺達としては生まれたままの姿の花子ちゃんがオススメ!」
「…………はぁ?」
コウさんのやけくその台詞にルキさんの表情は歪むけれど、
どうやら自身の為に一生懸命考えていたことが分かったらしく、今回ばかりはおとがめはないようだ。
そしてそのまま暫く彼はじっと考え込んでしまって、私達は彼の口から出る答えをかたずをのんで見守った。
「………が、いい。」
「ルキさん?」
「お前達と一緒の写真が、いい。」
本当に、真面目に…本気でそんな事を言いだすから
私達は互いに顔を見合わせて嬉しそうに笑い合った。
そして切り取られたのは4人の吸血鬼と少しばかりネガティブな人間の記念写真。
「それにしてもまさか写真だなんて…意外でした。」
「以前から欲しかったんだ…こういった幸せな写真が。」
しみじみと呟く彼に思わず顔がゆるむ。
私は意外にこういったルキさんの表情が好きだ。
穏やかな、嬉しそうな…そんな彼の表情。
そしてふと私の中にむくむくと我儘な考えが湧いてきてしまってそれを口にしようかどうしようか悩んでしまう。
ああ、けれど…うん、少し勇気を出そう。
こんな事言えるの多分今日くらいだ。
「ルキさん、」
「花子、」
互い同時に名前を呼びあってバチリと目が合って苦笑してしまう。
ああうん、きっと言いたいことは同じ言葉だ。
良かった…こんな考えを持っているのが私だけじゃなくて。
ルキさんは一通り笑ったと小さく息を吐いて少し恥ずかしそうに私が言いたかった言葉を口にする。
「花子、二人だけの写真も…いいだろうか?」
「勿論です、私からの誕生日プレゼントですね。」
互いに微笑み合ってパシャリと乾いた音の後に再び切り取られたのは
幸せそうに微笑んだ二人の恋人同士だった。
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