49:期限は三日


「なぁ、花子…3日後、デートをしてくれないだろうか?」



「……………………え?」



「…花子のその反応に割と本気で泣きそうなんだが。」



少し悲しげに微笑んだルキさんに大慌てで弁解してすぐさまそのデートのお誘いをOKした。
だって仕方ない。今までルキさんがデートとか…誘ってくれたことってなかったんだもの。



いつだって私と過ごすのは彼の部屋で、ずっと本を読んでいたり時々ぎゅっと抱き締めてくれるくらいだったから
そりゃ驚いてあんな反応してしまう。



「三日後、楽しみにしている。」



彼は私の了承の言葉に嬉しそうに微笑んでくれたが
ぶっちゃけてしまうと今私はそれどころではない。



…彼氏とのデートって何をすればいいんですか!?






「ユーマ君、アズサ君どうしよう。今夜は赤飯だよ。」



「え、な…なんで赤飯…?というかどうして泣いてるんですか私は真剣なのですが…」




困り果ててしまい、コウさん達に相談すれば
みんな三者三様に号泣しだしてしまった。
コウさんは可愛いハンカチであふれる涙を拭っていて
ユーマさんはぐいっと上を向いて涙が零れないように頑張っているが実際ボロボロである。
アズサさんだけはぱぁっととっても嬉しそうな笑顔でこちらを見ている。



「でもよぉ花子、お前ルキとデートしたことあるだろ?眼鏡屋デートだっけ?」



「…あれは本当に眼鏡を買いに行ってすぐ戻って来たので…その今回のようなちゃんとしたデートと言うのは…」



それにあの時は私が無理矢理に近い形で連れていったのでデートと言うか…うん、普通の買い物に近い。
そして今回は何とあのルキさんからのお誘いだ。
何とか…何とか楽しいとまで行かずとも悪くない一日だったと言っていただきたい。


「とりあえず!!」


「はっ、はい…!」


「何処まで行く気だ?ん?遂にヤっちまうのか?あ?ゴムは何個いる?」



大きな声で叫んだユーマさんがガシリと私の肩を掴んでずいっと顔を近付けてとても真剣にそんな事を言うものだから思わずぼふんと顔を赤くさせてしまう。


あ、あの…その、私はただルキさんとデートをするだけでしたそのあのそのそんなそんな…!


頭がパニックを起こしてだらだらと汗をかいていれば後ろにのしっと重み。
ふわふわと甘い香りを漂わせている辺りどうやらコウさんのようだ。


「まぁそれも心配だけどー。やっぱりお洋服かな!?折角だからとびきりオシャレしちゃおう!!」


「え?で、でも私の服、コウさんがほとんど素敵なものに変えてしまっているのでその中からで…」


「だぁーめ!折角の初1日デートなんだよ!?とびっきり可愛くしないと!!」


私の言葉に明るい声で答えてくれるコウさんはとっても頼もしい。
と言う事はまたコウさんのプロデュースデイが始まってしまうのだろうか?
それは少し楽しみかもしれないと小さく笑えば
にょきっと私とユーマさんの間から顔を出したアズサさんがニッコリ微笑んだ。



「ねぇ花子…折角…だから、香水とか…付けてみようよ…きっと、もっと…可愛くなる…」


「こ、こうすい…ですか?」


…そんな大人っぽいモノ付けた事無いし
あれって好みもあるからルキさんが好きじゃない香りだったら…
というかそもそも香水自体お好きではないかもしれないし。



けれど察しがいいアズサさんは私の考えを読んだのかニッコリと微笑んで、ぐっと右手の親指を突き立てて可愛いけれど格好良いポーズ。



「大丈夫…ルキの、好みは…把握済み」


「あ、アズサさんすごい…!」



こうして私達は3日後に迎えるルキさんとの初デートの為に私大改造計画を発足したのである。



少しでもルキさんに可愛いとか、綺麗だとか思われたいって思ってしまう私は本当に図々しい。
…けれど今はそんな自分が嫌いではないのだ。



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