83：幸福の微笑み

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「まぁそう言う訳だから詳しく説明してもらえるんだよね？花子ちゃん？」




「え、あの…ど、どこから…でしょうか？」




「んなもん最初からに決まってるだろーがニートが花子の兄ちゃんだぁ？どういう事だよ」




「う、う、う…」



「まぁこれで…花子とシュウさんが……………なんて可能性は、消えたの…かな？」



「ちょっと待ってくださいアズサさんさっきの沈黙の意味が怖いです。」



今日も相変わらず、ずいずいと壁際に追いつめられる。
…正直美形三人にこんな感じで追い込まれてしまうといたたまれなくて仕方ないのだが。



「ええと、シュウおに…シュウさんの事ですか…ど、どこから話せばいいのやら」



「は？シュウ君の事お兄ちゃんとか呼んじゃってるの？待って待って動画で見た時よりもダメージ大きいコレ」



「だろー？俺も正直あの時ニートとルキんとこ乱入しに行きたかったぜ…俺だって花子に兄ちゃんとか呼ばれてぇよ」



「………コウも、ユーマ…も、そういう…趣味…だった、の？」




「「違う！違うけどなんかうらやましい!!」」




私の戸惑い気味な一言に食いついてきてしまったコウさんとユーマさんに対して
アズサさんがじとりとした目で二人を見つめたのですごい剣幕でそんなアズサさんに返したコウさんとユーマさんに私も少し引いてしまう。




ぎゃんぎゃんと末っ子さんに喚き散らす彼らをよそに少し思い返す今までの事。
自身が忘れていた事も含めて…




色々傷付いた、諦めた、憎んだ。




自分が悪かった事も、また逆な事も全部全部。
結果私の人格は歪んでしまって、沢山の人を傷つけたり苦しめたり…してしまった。
自分が傷付かないためにと歪めてしまった人格は、本当に大好きだった人を酷く傷つけていて…
また、そんな私を見て目が離せなくなってしまった人も…また、苦しませたりして…




でも、




「そもそも！アズサ君一人だけノーマルぶってるけど絶対心の中では自分だって花子ちゃんにお兄ちゃんって呼ばれたいって思ってるでしょ!?」




「そうだぜ!!自分ばっか常識人分じゃねぇよてつーかそもそも…」



「俺、は……花子を…面と向かって…おねえちゃんって、よびたい」




「「そっちかー!!」」



ますますヒートアップしてしまう弟さんたちの痴話喧嘩。
その様子をじっと見つめて口元が少しだけ、小さく緩んだ。




傷付いて、諦めて…憎んだ分、
その分、嬉しかったり、楽しかったり…愛しかったり
そんな感情があったのも確かで…




幼い頃はシュウさんと沢山の場所で笑い合った、とても胸が暖かかった。
壊れてからは彼らに…弟さん達に本当によくしてもらって、自分一人でできない事だって背中を押してもらったり。




そして…




「おいお前たち喧しいぞ。一体何…」




「ちょっとぉぉ!!ルキ君!!ルキ君は花子ちゃんにお兄ちゃんって呼ばれたい!?それとも花子ちゃんをお姉ちゃんって呼びたい!?どっち!?」



「いやルキはどっちかってーと…」



「うん…将来的に……奥さんとか……嫁…とか、でしょ？」




「………いったい何の話をしていたんだ本当に。」




いい加減ヒートアップしすぎて部屋が揺れるんじゃないかって位の大声が飛び交い始めた時
ルキさんが少しばかり顔を顰めて部屋へと入ってきてしまったのでそれを見たコウさんが勢いよく彼に掴みかかり問いただしたけれど
ユーマさんとアズサさんが真顔でそんな彼を窘めた。
そして状況が把握しきれていないルキさんがチラリとコチラを見つめて「どういうことだ」と目で訴えてきてしまったので
もう堪え切れずに私は小さく吹き出してしまう。






「ええと、しあわせだなーって話をですね」



「「ちがう！そういう話じゃない!!」」




「？」





全てを要約して出た言葉にコウさんとユーマさんはまた大声を出してしまったけれど
アズサさんは穏やかに微笑んでルキさんはそれぞれの反応が違うので首を傾げるだけだ。




微笑みあって胸が暖かで…
壊れていても背中を押してくれて…




そして何よりも愛してくれて…





酷くつらい時期も確かにあったけれど
それを差し引きしても今、私は…



「やっぱりしあわせ、です」



ぎゃいぎゃいと喚いたり微笑んだり頭にハテナマークが浮かんだり…
それにきっと今もどこかで見守ってくれているお兄ちゃんに、
気が付けば割と愛されていた自分に小さくまたひとつ、笑いが漏れた。



嗚呼、何だか少し…
昔の自分に戻れた…そんな気が、した。

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