3:僕のねぇさま…


部屋には沢山のかわいいヌイグルミ達
散らばる綺麗なお菓子たち
そしてそんな中ひとりポロポロ涙を流す男の子。



「う…うぅ…ぐすっ」



「か、カナト君…泣かないでぇ…」



「だって…だって大好きな花子さんがシュウのお嫁さんだなんて…あんまりですっ!」



ぎゅうぎゅう。
可愛すぎる嫉妬に苦笑しつつもテディ君をぎゅうぎゅう抱き締めているカナト君を後ろから抱き締めてあげている状態だ。


そう言えばカナト君とは顔を合わせているけれどシュウ君と一緒になるって本人に直接は言っていなかったと思い報告に来れば先程からこの状態である。



「ねぇ花子さん…花子さんは僕の事好きじゃないの…ほんとはキライだったの…?」



「なぁんでそんなに極端になるの…好きだよ、カナト君。だいすき。でもね?私、シュウ君は好きじゃなくて愛してるの」



私の腕の中でもぞもぞと動いたカナト君は向かい合いの体勢を取って
未だに綺麗な涙を零しながらじっとこちらを見つめてそんな事を言うから私は自身の素直な気持ちを言葉にする。



「私は器が大きい偉人じゃなくて只の一般人だから…好きはたくさんあげる事が出来るけれど…愛は一つしかなくて…もうそれはシュウ君にあげちゃってるから」



「…花子さん、は…そんなにシュウを愛しているの?」



「うん、愛してる。それこそこの身体を覚醒させてもいいって簡単に思えちゃえる位…どうしようもなく愛してるよ」



それは紛れもない事実で変えようのない気持ちだから隠す気さえ起きない。
すると暫くじっと固まって考え込んでいたカナト君が
その可愛いほっぺをぷくーっと膨らませてご不満な顔でこちらを睨みつける。



「…もう花子さんの愛がないならしょうがないです。ないものはないですもんね。すきで我慢してあげます。」



「ふふ…カナト君は優しいなぁ」



「そうですよ。僕は優しいんです。」



むぎゅっと先程までテディ君だけを抱いていたそのシュウ君よりかは小さな腕が
私とテディ君をまとめて抱き締めるから少し苦しかったけれどカナト君もカナト君なりに納得してくれたんだって思うと自然と顔が笑顔になる。



「こんなシュウに夢中な花子さんをお人形にしたって悲しいだけだし…だったら生きてる花子さんにたくさん好きって言ってもらう方がいい…」



「カナト君?」



「ううん、何でもないですよ。ああ、そうだ…これから花子さんはシュウと一緒になるんだから花子さんってままじゃなんだか…うーんどうしよう。」



小さく呟いたカナト君の言葉が聞こえなかったけれど
彼は何も言わずに今度は私の新しい呼び名をうんうんと俯いて考え出した。
そして数分後、ぱっと顔を上げてにっこり可愛い顔で微笑んだ。



「ねぇさまがいい…ね?花子ねぇさま。」



「………可愛いカナト君にねぇさまって呼ばれると犯罪臭がする。」



そんな私の言葉に声をあげて笑ったカナト君はもう涙を零していなくて少しほっとした。
やっぱりこの可愛いお茶飲み友達にも祝福してほしかったから。




「あれ、シュウ君何してるの?」



「………今回は全面的に花子が悪い。」



カナト君の部屋から出れば扉のすぐそばで三角座りしてしゃがんでいるシュウ君を発見する。
大きな両手はその綺麗な顔を隠してて見えないけれど耳まで真っ赤な辺りその顔も同じく赤いのだろう。
カナト君の部屋の傍に居て、この反応…
全く、シュウ君はやっぱり可愛い。



「盗み聞きはよくないよ?シュウ君。」



「花子が危なくなったら助けようって思って来てみたら…聞こえただけ。」



きっと先程のシュウ君への愛のノロケが聞こえてしまっていたのだろう。
指の隙間からチラリと見える青いその瞳は濡れていた。
ホント…可愛くて、愛おしい。



「誰よりも愛してるよシュウ君。」



「…………俺も。」



「ちょっと!イチャイチャするなら僕の部屋の前じゃなくて自室でしてくださいよ!!もうっ!」




バタン!大きな音を立てて扉が開かれたかと思うとぷんすこ怒っちゃってるカナト君に
二人で顔を見合わせて苦笑した。



なんだか、お互いの事になるとちょっと周りが見えなくなるクセ、どうにかした方が良いかもしれない。



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