2:天国見せてやんよ
「…どうして今まで黙ってたの?コウ君。」
「だ…だって、それは…」
「おい、コウ。コイツ何とかしろよすげぇうぜぇ。」
「コウ君とスバルきゅんがお友達だなんて私、聞いてないよ!?」
「だって言ったらこうなるのわかってたんだもん!言うわけないよね!!」
今、俺の恋人の花子ちゃんは俺の友達のスバル君に巻き付いている。
もうそりゃねっとりと。ああもうだから言いたくなかったんだよ!スバル君はスバル君で、どうすればいいのか分からず花子ちゃんにされるがままだ。
いいんだよ、スバル君思いっきり花子ちゃんを引っぺがしてくれたって…
困惑の表情を浮かべるスバル君、今にも泣きそうな俺、そして恍惚の表情を浮かべる花子ちゃん。
「ああもうこの美し過ぎる白い髪…血のような瞳…そしてがっしりとしたこの身体…
素敵すぎる・・・うふ・・・うふふふふふ」
「お、おいお前の彼女なんだろコイツ。何とかしろよ」
「暴愛とか言っときながら殴りかかってこないスバルきゅんマジ天使!
そんな典型的ツンデレっこな貴方が大好き!やだもう惚れる!抱いて!!」
「ぎぃぃぃ!スバル君!俺から花子ちゃん取る気!?このどろぼう猫!!
っていうか花子ちゃんもいいかげんはーなーれーてーよー!」
ぐいいいいい
力いっぱいスバル君から花子ちゃんを引きはがそうとするけど訳分かんない強い力でスバル君から引っ付いて離れない彼女。
何なの!なんなのもー!
「コウ君そんなにスバル君を取られたくないの?仕方ないなぁ
コウスバなのかスバコウなのかお姉さんに正直に話してごらんよ。」
「違うでしょ!逆でしょ!!ていうか自分の彼氏でホモの妄想とかしないでよね!そして花子ちゃんはお姉さんじゃなくて年下でしょ!!」
「ほ…ホモって…はぁぁぁ!?」
「ああんもうこんなに真っ赤な顔になっちゃってほんとスバルきゅんってばウブで純真なんだから!大丈夫!私の彼氏でよかったら全然貸すから!!抱くなり抱かれるなり好きにしたらいいと思う!!」
「ちょっとおおお!勝手に俺を貸し出さないでよ!!それに抱きたいと思うのも抱かれたいと思うのも花子ちゃんだけなんだから!!ちょっとは俺の気持ち尊重したらどうなの!?」
しーん…
え、アレ?
なんで急に静まりかえっちゃったの?この沈黙すんごく怖いんだけど
な、なに…どうしたの急に。
どうして花子ちゃんとスバル君は俺を見て固まってるの?
「コウ・・・お前、そんな趣味が・・・」
「え?スバ…スバル君?」
なんで顔赤くして背けるの?
そして花子ちゃん、何でいきなりスバル君から離れて俺の肩に手を置いてるの?そして何を恥じらってるの、ちょっと意味わかんない。
「ご、ごめんねコウ君…今まで、その、気付いてあげれなくて…」
「え、あの…花子ちゃん…?な、なに…」
「コウ君が私に“抱かれたい”と思っていたなんて…その…あんまり自信ないけど…大丈夫、ちゃんと気持ちよくしてあげるから!」
「…………え。」
瞬間俺は彼女に引っ張られてズルズル歩き出した
進む方向に見えるのは保健室。俺は確実に身の危険を感じた。
「や、ち…ちが、違うから!花子ちゃん止まってお願い!お願いします!!
さっきのは勢いで言っちゃっただけで本当はそんな事思ってな…!」
「大丈夫!」
くるりと振り向いた俺の愛しい愛しい花子ちゃんはとっても愛らしい笑顔でこう言った。
「天国、見せてやっから」
「や…やだ、た…たす、助けてスバル君…!」
全身の血の気が引く音がして
最後の望みであるスバル君に助けを求めるとこともあろうか彼は顔を赤くしながらこう言いやがった。
「…これが、ダチが大人になる瞬間、か。」
「い、今そんな天然馬鹿発言は求めてないよおおおお!」
俺の魂の叫びは空しく、夜学校にこだまして消えたのだった。
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