4:可愛い私の彼氏
「やぁっぱさぁ俺ってば超絶イケメン美少年じゃーん?花子ちゃんってばそんな俺と付き合えてるだなんてホント幸せ者だよねぇ。」
「………はっ」
「オイ、こら。何今鼻で笑った?笑ったよね、どういう事?」
俺のその得意気な言葉にまさかの嘲笑で返してきた恋人の花子ちゃんに青筋を立てておでこをゴチンを彼女のそれにぶつけた。
ギリギリとお互いが睨みあっている状態。これで恋人同士だといえばだれもが疑うだろう。
「コウ君がイケメ〜ン?かーわーうぃ〜うぃ〜の間違いじゃないんですかぁ?」
「はぁ?俺イケメンだし、超格好良いし絶世の美少年だしぃ〜!」
グリグリ、ギリギリ。
両者一向に引こうとはしない睨みあい。
俺にだって男としての意地ってのがある!
「大体いつもいつも可愛い可愛い可愛いって!俺だってたまには格好良いって言われたい!」
「はぁ!?格好良いって言うのはシュウ・サカマキ大天使様のような気怠げな色気満載のフェロモンをまき散らす選ばれし者のみが呼ばれることを許される特別な呼称なんだよ!彼ならば私は受けでも攻めでもイケると信じてやまない!リバ大歓迎!今度の新刊はシュウコウにしてやろうか!」
「ぎぃぃぃい!訳わかんない脅し文句を付けないでよ!」
彼女の頭おかしい台詞に頭を抱えてわしゃわしゃとかきむしる。
俺だって花子ちゃんの彼氏なんだからたまには格好良いって言われたいんだよぉ!
「いいじゃん別に。他のエム猫ちゃん達には格好良いって言われてるんだしさぁ」
「やーだーよー!俺は花子ちゃんに言われたいの!花子ちゃんじゃなきゃヤなの!」
呆れた様に呟いた彼女に対して
大きな声でわめいてみると、そんな俺の反応に
花子ちゃんはその表情を憐みのものに変えて、ポンと優しく肩に手を置く。
「そーいうとこだよ、コウ君。」
「え、な、何が。」
ニッコリと、優しく微笑む花子ちゃんに思わず困惑する。
「かわいいっつってんの。寧ろ受けだっつってんの。」
「はぁ!?そんな事あるわけな…っん、」
ぐいっと胸倉を掴まれたかと思うと引っ張られて、いきなり唇を押し付けられ一瞬時間が止まった気がした。
そっと離される瞬間にペロリと舐められて、思わず顔中に熱が集まってしまう。
そんな俺を見た彼女が意地悪くニヤリと笑って勝ち誇ったような口調で一言。
「ホラ、コウ君超かわいい。」
「〜〜〜っ!もう!馬鹿!花子ちゃんの馬鹿!」
ポカポカと決して強くない力で彼女を叩くと
ふはははとと気の抜けた笑い声が響く。
そして彼女はにっこりと、ふわふわと微笑んだ。嗚呼、俺はこの笑顔が誰よりも大好きなのだ。
「私はさ、格好良かろうが可愛かろうが勿論格好悪くたってコウ君が大好きなんだよ?」
「な、んだよ…ソレ…ずるいよ…格好良すぎ、バカ」
いつもいつも花子ちゃんは俺の欲しい言葉をくれる。
それも本心から。
だから俺はきっと彼女の事を手放せないでいるんだろうなぁ。
「俺も…どんな花子ちゃんでも大好きだよ…」
「え、マジで?」
「え」
「じゃぁ取りあえず今から大天使シュウ様の元へゴウトゥヘヴンしてくっからご飯要らないってルキさんに言っといて!」
「ちょ、ちょっと花子ちゃん!?花子ちゃぁぁぁあん!」
物凄くイイ顔でそう言い放った彼女は
そのまま何処かへ走り去った。
「もう!もう!花子ちゃんの馬鹿!大好きなんだからね!バーカ!」
俺の叫びは空しく響き渡ったが遠いところで「わたしはあいしてるー!」とでっかい叫びが聞こえたので逆に自分が真っ赤になってその場にへたり込んだのはまた別の話である。
「だから俺花子ちゃんに可愛いって言われるんだ…」
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