5:腐った愛すべき日常


「あーもー花子ちゃんの馬鹿ぁぁぁだいすきだー!」


俺は現在花子ちゃんに放置プレイを食らわされている。
というか二人でイチャイチャしてたらそこに逆巻さん達が通りかかって光の速さで俺を放り出してこっそりついて行っちゃったのである。



きっと今頃逆巻イズジャスティス!好きすぎる抱いて!とかハァハァしながら叫んでるんだろうなーと安易に想像できる。そしてそんなお馬鹿な彼女を先に帰らずに健気に待っている俺はすごくできた彼氏だと思う。



「もう…アイドルを待たせるとかありえない。こんなの花子ちゃんだけなんだからね。」


ふてくされながらそんな事を漏らしていると
ガタリと扉の方から音がして、瀕死の状態の彼女の姿を確認する。

「花子ちゃんおかえりー。」


「て…っ天使が6人とかこの学校はどっかおかしいに違いない…!」


「どっかおかしいのは花子ちゃんだからね。」


「いつかあの6人に血を吸われまくって失血死するのが私の夢です…!」


「はいはい、そんな事したら俺が全員殺しちゃうから。ホラ、帰るよー。」


「コウ君なんかに天使を殺させて溜まるか!」


「だったらずっと俺にだけ血を捧げてよねーっと!」


ひょいっと花子ちゃんを横抱きにしてスタスタと歩き出して校門へ向かう。
アイドルにお姫様抱っことか夢のような事をされているにもかかわらず照れた表情一つしない彼女はホントどっかいかれてるんじゃないだろうか。

「花子ちゃん軽すぎ。ちゃんと食べてるのー?」


「あ、わかる?逆巻さんが好きすぎて一日5食しか喉を通らないのよ。」


「何ソレ、食べ過ぎだから。」


そんなバカみたいな会話。
けれどそれが案外嫌じゃなくて、俺は結局彼女のペースに乗せられてるんだなぁと実感して思わず苦笑いを零した。

「ていうか逆巻さん逆巻さんうるさすぎ。花子ちゃんは俺の彼女でしょ?今度から逆巻さんって言う度に罰としてキスでもしちゃおうか。」


「え、マジで?じゃぁもういっそ語尾を逆巻さんにしようかな。そしたら常にコウ君チューしてくれるんでしょ。やだ萌える。」


「…なんなの、俺の事好きすぎじゃん。」


「すきだよー!愛してるよコウくーん!!らーびゅ!!」


「ちょ、ちょっと暴れないでよ!落とすでしょ!?そしてうるさい!!」


ギャーギャーと暴れる彼女を必死に抑えつけながら俺は心の底からおかしくて笑ってしまった。馬鹿げた日常だけど、それがたまらなく愛おしい。


「こういう毎日がいつまでも続けばいいね。」

「………やだ、何その台詞死亡フラグ?」

「空気読みなよバーカ。」



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