嬉し恥ずかしバレンタイン!
「はい!ユーマ君!バレンタインチョコどうぞ!」
「…おー、サンキューな。」
…あれ?
私は一生懸命作った愛情たっぷりのチョコをユーマ君に差し出したのだけれど
いつになくそっけない態度で受け取られてしまった。
あれ?ユーマ君甘いの好きだよね?あれ?
なんでこんなにそっけないの?
疑問に思ってしまったけれど、ユーマ君はそんな私を置いてスタスタと何処かへ行ってしまう。
ぽつんと取り残された私は呆然だったけれど
ぬっと、突然隣からふわふわの金髪が現れた。
「アイツの事、つけていってみろ。…面白いの見れるから」
「神出鬼没だね、ニート君」
「おい、その呼び方やめろ」
だってユーマ君がニートって言ってるもの。
でも彼の言葉が気になって言われるがままにユーマ君の後をこっそり追いかけてみることにした。
彼の後を追いかけてみれば辿り着いたのはユーマ君の愛しの家庭菜園場。
彼は何度もキョロキョロと辺りを確認する。
まるでその姿は泥棒のようだ。
そして幸いな事に私に気付く事はなかったようで、長い安堵のため息をついたかと思えばその場にヘナヘナと座り込んだ。
ど、どうしちゃったのだろうか?
「………マジかよ」
小さな声だったけどそれはしっかりと私の耳に届く。
何がマジなんだろう…
すると不意に顔を上げたユーマ君の顔を見て私はびっくりである。
…耳まで真っ赤だ。
「手作り…花子の、手作りか…うわ、やべ…」
ユーマ君、ユーマ君。今ね、私の方がやばいよ。
そんな真っ赤になりながら大切そうに手作りチョコ抱き締めないでよ流石に照れちゃうよ。
けれどそんな私に気付かないユーマ君の独り言はさらに続く。
「おい、お前ら見ろよ。花子の手作りだぞオイ。やべぇよどうすんだよ勿体ねぇよな…あーやべ、泣きそう」
…菜園の野菜達に私のチョコ自慢するのやめてくれるかな?
もう私は恥ずかしさやら嬉しさで胸がいっぱいだ。
ユーマ君の前に私が泣いちゃいそうだよ。
ぶるぶるとその場で震えながら更に見守っていれば本当にグスッと泣いちゃったユーマ君にびっくりする。
そ、そんなに嬉しかったの?私の前じゃ全然だったのに。
そして更にそのチョコをぎゅうぎゅう抱き締めて可愛い独り言。
「あーマジどうすっかな。半分食って…半分は保存…」
「せ、せっかく作ったんだから全部食べてよ!」
「ぅおおおおお!?」
彼の思わぬ言葉に気が付けば大きな声をあげていて
ユーマ君は私の存在を認識した瞬間私より大きな声で叫んであわあわと必死に涙を拭う。
「お、おまっ!いつからそこにいたんだ!」
「『………マジかよ』からかな」
「最初からじゃねぇか!」
また盛大に赤面してしまったユーマ君が非常に可愛かったから精一杯ジャンプして彼に飛びついた。
するといつもの様に軽々受け止めてくれたけれど、体は吸血鬼のクセにすごく熱い。
「どうして私の前で喜んでくれなかったの!?一瞬泣きそうだったよ!」
「ば…っ!格好ワリィだろぉ!?無茶言うんじゃねぇよ!」
「私は格好悪いユーマ君が大好きなのに!」
私の告白に今度はぼふんといけない音がユーマ君の頭から出てしまった気がする。
そしてもうこれでもかっていうくらい真っ赤になりながら先程まで泣いていたので潤んだ瞳で感謝の言葉。
「スゲェ、嬉しかった…サンキュー」
「ふふ、どういたしまして!」
照れながらもしっかりとお礼を言われてしまえばもう私は大満足で
そのままチョコのおまけとして彼に自分から可愛らしいキスをプレゼントした。
(「なぁ花子、今度はシュガーちゃんに自慢してもいいか?」)
(「あのさ、せめて生き物に自慢してもらえると嬉しいかな?」)
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