救出劇〜ルキ君の場合〜
「いやぁ…私も捨てたものではない!!」
現在私は大歓喜である。
何故ならルキ君とのデート待ち合わせの時にナンパというモノをされてしまったのだ。
いつもいつも家畜とか社畜ばっかり好き放題言ってくれちゃってルキ君に対して
目の前の彼等は私をどうにかお持ち帰りしようとさっきから可愛いとかスタイルいいとか褒め言葉の嵐である。
私だって女の子だし悪い気はしないってね!
まぁ勿論ついて行くくなんてないけれど…
取りあえずルキ君がやってくる間までいい感じの暇つぶしを見つけた私はこの軽すぎる男性諸君に絶賛されて有頂天なのである。
けれどそんな調子に乗りまくっている私に盛大な天罰が下るのだ。
「ほう…貴様は俺を怒らせる天才のようだな、花子」
「………わぁ、今からデートだって言うのにその人殺しちゃいそうなオーラどうにかしてください。」
突然地を這うような声をその場に響き渡ってしまい、今まで私をヨイショしまくっていた男の人たちが一目散へと何処かへ逃げていってしまった。
うん、仕方ない。仕方ないよ。今のルキ君マジで恐ろしい顔になっちゃってるからね!
けれど私にだって言い分ってものがある。
彼等に褒め称えられまくっていたのは紛れもないルキ君の普段の言葉不足ってやつだ。
私だって一般女子である。いつもいつも家畜、社畜呼ばわりだったら悲しいし不安にだってなるんだ。
…私ってそんなに魅力がない女のかなって。
「花子、家に帰るぞ。」
「…はーい。」
あーあ、やっぱりこうなるか。
まぁ仕方ない。ルキ君のご機嫌を損ねてしまったのだ。デートどころではないだろうし。
小さく息を吐いて大きな歩幅で歩いてしまう彼の後を追う。
ルキ君の為にオシャレした洋服もお化粧も髪型も全部無駄だ。
まぁどうせこんなに頑張った所で貴方は何も言わないのだろうけれど…
ようやく彼の部屋に辿り着けば突然ぎゅっと体を抱き締められる。
こんな事絶対にしないひとだからちょっと驚いてされるがままになってしまう。
「る、ルキ君?どうし…」
「息が止まるから…ああいう事はやめてくれないか。」
彼の言葉の意味が分からず首を傾げればその綺麗な顔は私の肩へと埋められてしまう。
そして少しばかり震えた声で彼の言葉は続く。
「俺の言葉が足りないのなら善処する…だから…だから、他の男の言葉なんかであんな顔だけはしないでくれ。」
彼のそんな必死な台詞は初めてで
とんでも無く申し訳ないのは分かっているのだけれど…不安にさせてしまって申し訳ないと思っているのだけれど
今の私の顔面は幸せでとんでもなく緩んでしまっている。
「じゃぁもっと私の名前を呼んで?家畜とか社畜ってヤなの」
「花子…花子、花子…、」
「もっと好きとか愛してるって言ってよ…私だって不安になるんだから。」
「花子、好きだ…愛してる……だから、もうあんな…ん、」
私の数々の要望に必死になって答えてくれるルキ君が愛おしくてもう我慢が効かなかった私はそのまま彼の唇を塞いでしまう。
言葉の途中で飲み込まれたルキ君の顔は少しばかり赤い。
「ねぇルキ君。今日ルキ君とのデートの為にオシャレしたの。…どうかな?」
くたりと首を傾げて問えば暫く固まった後に小さな声がぼそぼそと響き渡る。
けれどその言葉はしっかりと私の耳に届いていて
彼の愛の言葉の応酬に満足気に微笑んだ。
“愛らし過ぎてツラいから…ここへ連れて来たんだ。”
そんな愛おしい言葉は先程の軽すぎる男たちのヨイショのマシンガントークなんかよりも
遥かに私の気分を高揚させた。
流石私の最愛。
ちゃんと言う時は言って下さる。
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