歌の続き


「確かに昨日は俺の新曲のカラオケ配信日だったけど…彼氏の俺を置いて1人でカラオケって…何事?」



「ご、ごめんなさいシュウさん…あの、嬉しくてはしゃいじゃって…つい。」




ベッドの上で今、私は大人気アイドル様にぎゅうぎゅうと拘束されてしまって全然身動きが取れずにいる。
恐れ多い事にこのアイドル様ってのが私の彼氏様である。


「確かに外は人目がヤバいけど…変装位するのに」



「しゅ、シュウさんにご迷惑かけたくなくてその、んんぅ!?」



相当ご機嫌ななめなのか彼のジトリとした視線に耐えきれず言い訳をすれば、途中で彼の柔らかな唇に遮られてしまう。
ああ、どうしよう…なんだかこうされてるの、夢みたい。


ドキドキと心臓の高鳴りは彼に聞こえてしまっているのだろうか…
そんな不安を感じながらも激しくて深いキスに溺れているとゆっくりと離されてしまう。
…少し寂しいな、なんて…口が裂けても言えないけれど。



「俺を独り残して出かけられる方がよっぽどご迷惑。」



「ご、ごめんなさい。」



彼の言葉に素直に反省してごめんなさいのハグを自らもしてみれば優しく頭を撫でてくれるシュウさんが私は大好き。


最初はアイドル様の彼女なんて恐れ多いって思ったけれどこうやって彼は存分に私を甘やかしてくれるし愛してくれるから
私もそれに応えたいって思う。



「で?どうだった?俺の曲…歌えたの?」



「ええっとえっと、最初はドキドキして歌えなかったのですが5曲目からなんとか…えっと、きーすまーおねっ♪」



「ふふ…可愛い。違う、Kiss mark on neck …こんな風に、」



「あ、」




彼の腕の中でもぞもぞ動きながら身振り手振りを折りまぜ昨日の成果を歌ってみると
クスクスと嬉しそうに笑われて耳元でお手本と言わんばかりに甘く、優しく囁くように歌われて顔が赤くなってしまう。
そしてうっとりしていれば歌詞の通り噛み付かれてしまった首筋に思わず体が揺れる。



「ん、んぅ…シュウ、さ…あっ」



「かわいい…本当に歌詞通りだな、花子は…」



「え、どういう…」



ちゅっちゅと何度も音を立てられて首を吸われていれば羞恥と困惑、快楽で体が震えてしまう。
けれどここで怖いとか言って拒否なんかしたくなくて、同じく震える腕で彼を抱え込めばふにふにと私の唇を彼の指が弄ぶ。



「“……無理しちゃってさ”」



「!?ん、んぅ…ぁっ、シュウさ、んんっ」



「“……そういう所が好きなんだけど”…んんっ」



歌詞の言葉を意地悪に呟くシュウさんはみんなのアイドルなんかじゃなくて
只の一人の男性で…でもすごく格好良くて私はこっちの方のシュウさんが好き。
今度は強く首筋を吸い上げられて思わず高い声を出してしまう。
あ、どうしよう…背中、ぞわぞわしてきた。



つ、と…先程まで吸い上げられていた箇所を撫でられても、もはや私の口からは甘い声しか出ない。
そんな私を見降ろしてシュウさんは満足げに笑う。




「“ついたよ、キスマーク”」



「あ、あ…あ、」



なぞられる指も、その甘い声も全部心地いい。
ああでも、この台詞の後だともうおやすみの時間だ…それは少し寂しいなぁ
ぼんやりそんな事を考えていれば首をなぞっていた指が緩やかに下へと伸びてきてしまい
私は既に蕩けている思考回路で、首を傾げるのが精一杯だ。



「シュウさ…?…う?」



「ふふ…ねぇ花子、この先も付けていい?俺の、KISS MARK…」



「あっ」



どうやら現実のシュウさんはこのまま私をふわふわと幸せの夢の中へ誘ってくれるという訳にはいかないらしく
妖艶な微笑みでそう私に問うて、答えを聞かないまま私の身体に噛み付いてしまった。



ああもう、やっぱり私はアイドルのシュウさんじゃなくて
こういったすこしえっちなシュウさんが好きかもしれない。



「シュウさん…私にだけ、歌の続きを聞かせてくれるの…?」



「ん、花子にだけ…特別、な?」



それはきっと彼の彼女である私にだけの特権で…
きっとこれから奏でられるであろう私の為だけの歌に酷く胸が高鳴った。



戻る


ALICE+