第三次王様ゲェェム!


「お、俺はもう二度と逆巻シュウとは王様ゲームをしないと言ったはずだが…!?」



「ご、ごめんなさいルキさん…シュウさん、何だか気にいっちゃったみたいで…」



「く、くぅ…逆巻きシュウめ!」



「花子をぎゅうぎゅう抱き締めながら睨んだって全然怖くないからな。」



今再び俺は危機に瀕している。
以前逆巻シュウを巻き込んでの王様ゲームは俺の心に深い傷を付けて幕を閉じたのだが
どうやらそれがお気に召したらしく、再び無神家に殴りこんできたのは今回は逆巻シュウだけではない。



「くそ…逆巻レイジ…それに逆巻スバル…貴様達も俺を笑いに来たと言うのか!!」



「無神家長男の無様な姿が見れると聞きまして…」



「お、俺はその…暇だったから…」



逆巻レイジの素直すぎる言葉に青筋と、逆巻スバルのどこかそわそわしてしまっている態度に溜息である。
察するに仲間はずれが淋しかったな?逆巻スバルよ。



「来てしまったのならば仕方がない。さっさと済ませてササッと帰れ。生憎今回は俺とユーマしかいないがな。」



「ああ、無神家下位の二人ね…丁度いいんじゃない?」



前回の息子の大きさ順位での事を上げて嘲笑する逆巻シュウに今すぐにでも殴りかかりたかったがグッと我慢する。


花子に流血沙汰は見せたくないのだ。



それにいざとなれば俺にはカールハインツ様と言う切り札がいらっしゃる。
おちんのサイズくらい何とでもなるに違いない!!
…遠くから「私を巻き込むのはよしてくれないかい!?」と必死な声が聞こえた気もしなくはないがそんなの気のせいだ。



「さて、はじめようか…」



いい機会だ。
今度こそ逆巻シュウに逆襲してやる!!



「ええっと…王様だーれだ!!」



「おや、私のようですね…」




今回はコウがいないので花子が司会をする事になる、可愛らしい声が部屋に響き渡る。
そして王様の札を高らかにあげたのは逆巻家の眼鏡である。



「そう、ですね…では手初めに1番が3番に最近はやりの壁ドンというモノを…」



「あ、1番俺だわ。」



がたっゴチンッ!!!




ユーマが何気なく手を上げそう言えば、対照的に某末っ子の身体が激しく揺れて、テーブルに頭をぶつけてしまう。
…なぁ、逆巻スバルよ。以前も乙女側ではなかったか?
何だ、貴様…呪われているのか?



「おーし、ちゃっちゃと終わらせるぜ引きこもり。」



「す、好きにしろよもう…」



壁際に追い詰められた末っ子はもはやヤケクソなのか、相当不機嫌な顔でユーマを睨み上げるが
その視線が気に食わなかったのか、ユーマが勢いよく壁に手をついて至近距離で彼を射抜く。



「可哀想だからちーっと手加減してやろうって思ったが…気に食わねぇ。いっちょ最新版もためしてやる…よっ」



ゴスゥ!!!!



「ヒィ!!!!?」



ユーマがそう言うと同時に末っ子の足の間に勢いよく膝を入れた狂暴野生児に此処にいる花子以外の全員が縮み上がる。
ああ、敢えてどこがとは言わないけれど…


しかしまぁ…うん、ユーマは身長が190cmもあるから…その、うん。
逆巻スバル…本当に怯えきって女子みたいになっているぞ?なぁユーマ…可哀想だから離してあげなさい。
あ、しまった。つい母親のような言い方になってしまった。



「わぁ、ユーマ君格好良かったね!そしてスバル君は可愛かった!!はい次!王様だーれだ!!」



「お、俺だし…」



花子の悪気のない台詞が逆巻スバルにとどめを刺したけれど、神はどうやら無慈悲ではないらしい。
今回の王様はその可哀想な逆巻スバルだ。



「あー…じゃぁ、2番が4番に日頃の感謝を述べる。」



「おや、4番は私ですね。」



「おい、スバル。感謝が微塵もない場合はどうすんの?」



末っ子の発言にぐりんっと首を向けたのは彼の二人の兄だった。
お、オイ逆巻シュウ!貴様、逆巻レイジには日頃沢山過ぎるほど世話になっているじゃないか!!
以前だってパンツ履かされてたじゃないか!!
なのに感謝の意が微塵もないとはどういうことだ!!!同じく無神家のおかんとよく言われる俺としてもそれは納得がいかん!!



けれど彼は長い溜息をついたかと思うと困ったように…優しく逆巻レイジに微笑みかけた。
…おい、気持ち悪すぎて逆巻レイジの身体が小刻みに揺れているからやめてやれ。



「レイジ…お前はいつも俺の事穀潰しって言ってる割には俺の世話…欠かさないよな。そういうとこ…好きだよ…いつも、ありがと」



「ご、ごくつぶしぃぃぃぃ…っ!」



「なぁ俺の弟気持ち悪いんだけど」




逆巻シュウのそんな言葉に逆巻家のおかんの涙腺は大崩壊だ。
ボロボロと大粒の涙を流しながらひっくひっくと嗚咽を漏らしてむせび泣いている。
お、俺はいつも弟達にありがとうと言われているのに…!
不憫すぎるぞ逆巻レイジ!!!
そしてそんな彼のリアクションにドン引きしている原因の長男を殴り飛ばしたい。




「うぅ…いい話だったぁ…さて、これが最後です!王様だーれだっ!…って私だぁ!」



ぴょんぴょんと嬉しそうにはしゃぐ花子を見てこの場にいる全員が和む。
ああ、やはり花子はこの世の癒しだ。
けれど次の瞬間そんな癒しから核爆弾級の命令が下されることとなる。



「えーっと?王様ゲームの定番がいいよねぇ。んー…じゃぁ3番が6番にジュースを口移しで飲ませてあげる!!」



「「チェンジで」」



二人のイケメン男子の声が重なり合って同じ言葉を花子に紡ぐ。
ふ…ふふふふ。まさか貴様と意見が合うとは思わなかったぞ逆巻シュウ!!


そう、俺の引いたくじは6番、そして逆巻シュウの引いたくじは3番だった。
両者チラチラと睨み合いながらも花子に命令を変える様に視線を送ると彼女の瞳にじわりと涙が浮かんでしまう。



「シュウさんもルキさんも…王様の命令…聞いてくれないの?…ふぇ」



「くそっ!おいスバルジュースを寄越せ!!早くっ!」



「もうどうとでもすればいいだろう!!来い逆巻シュウ!貴様の全てを受け入れてやる!!」




今にも泣きそうな花子のそんな言葉を聞いたら俺達の行動は本当に早かった。
忘れてもらっては困るのだが、俺も逆巻シュウも非常に花子を溺愛してしまっている。


彼は素早く末っ子からジュースをひったくり、俺はそんな彼に抱き締められながらもう覚悟を決めた。




「「惚れた女に泣かれるくらいなら大嫌いな貴様に俺の唇くれてやる!!」」




そして開始されたのは花子のお望みの熱く激しく濃厚な
逆巻、無神長男のいやらしい口付けだった。




後日、逆巻シュウと無神ルキは実は恋人同士で
更には毎晩抱き合っている。



なんて噂が嶺帝学院高校中に広まってしまい
気を利かせた家畜が切れ痔に効く薬なんか持ってき出したので俺は独りで静かに泣いた。



逆巻シュウなんて、だいきらいだ。



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