meow


2月22日……
学校の廊下でも裏庭でもにゃんにゃんにゃんにゃん…
カップルの片割れが可愛らしい声で鳴いていて非常に鬱陶しい。




けれど…
嗚呼、けれど!!!





「早く特別教室へ辿り着け私!!」




少し速足だった足はもう我慢しきれないと言った感じで
競歩から猛ダッシュへと変わる。
私も2月22日…所謂猫の日って奴に便乗したいお年頃なのだ!!





「カルラさん!!」


「喧しいぞ花子、その首を始祖王である私に跳ねられたいのか良い趣味をしているな」



「か、カルラさん落ち着いて!!彼女!!!一応彼女です私!!!出会いのハグ位はされても許される立場の者です!!!」



「この私が下賤な人間風情の貴様を待ち望んでいたと抱き締めるだと?……思いあがるな。」





愛しい人がいらっしゃる特別教室へと殴り込めば
もうなんかそれだけで数百人は殺しちゃうんじゃないかって眼力で睨みつけられたけれど
伊達にもう何か月も始祖王の恋人をやっているわけではないのでそんな威圧もスルーして抱き着いてみれば今度こそ頭を鷲掴みにされて凄まれてしまったけれど私の表情はだらしなく緩みっぱなしである。
だって私ハグされてもいい人間だとは言ったけれど何も待ち望んでたとまでは言ってない。





本人は気付いてないのかもしれないけれど、
彼のそういう所が私はすごく好き。




「カルラさんカルラさんそれより聞いてくださいよ!!今日2月22日です!!猫の日ですよ!!」



「それがどうした」



「にゃんって言ってください」





…………………





頭を掴まれっぱなしでとりあえず今日の本題を口にすれば
普段から静かな特別教室が更に静寂へと導かれてしまう。
そして数十秒後に聞こえた実は一緒に居たシン君の堪え切れなかったであろう笑いを吹き出してしまった声だけが響き渡る。
あ、今日はシン君の命日だ。絶対カルラさんに殺されちゃう。




「花子……私はそんな低俗な行事に参加するつもり等毛頭ない………と言うかそれは女の貴様が言うべき言葉だろう」



「二人の愛の形に一般論は通用しませんと言うかぶっちゃけ私は可愛いカルラさんが見たいんです」



「貴様」




両者一歩も譲らないこう着状態。
カルラさん…すごい威圧で睨んできちゃうけれど私はこんな事で怯えて
「はいそうですね」と素直に諦めるような聖女ではないのだ。




「いやだぁぁぁ!!可愛いカルラさん!!!にゃんにゃんカルラさんが見たい!!いつも格好良くて素敵でメロメロだけどたまには可愛さ全開のカルラさんが見たいいいい!!!」



「……………」



「兄さんが愛されすぎてて流石に引く」




彼の頭を手を振りほどいて床に転がってダダをこねまくれば
ずっと見ていたシン君のため息交じりの呆れた声が聞こえてきちゃったけれど仕方がない。
だって!!!カルラさんはいつも格好良くて素敵でそれでいてなんだかんだで私に優しくしてくれる本当に大好きな人なんだけども
こう……始祖王様だから無神家の次男さんみたいな可愛さ全開ついでにあざとさも全開!!みたいなところって見せてくれないんだもん!!




「見たいよー!!!!にゃーんって鳴いてくれる可愛い可愛いカルラにゃんがみたいよおおお!!!」



「花子、」



じたじたと床の大掃除を体全体で行い続けていれば
地獄の死者よりも低いんじゃないよって声が私の名を呼ぶ。
それを合図かの様にピタリと体の動きを止めて、床に寝転がったままじっと最愛を見つめてみれば
その頬は少し……ほんの少しだけ赤い。




カルラさん、カルラさん
私がカルラさんの事格好いいとか素敵とか言いまくったから照れちゃいましたかどうしようそんなカルラさんも最高に可愛い。




私の望んだものではないけれど、彼の可愛いところが見れてしまって
一秒でも逃さないようにを食い入るようにずっと目を離さないでいればひとつ、咳払い。




「……………meow」



「え、」



「これでも読んで少しはその空っぽの頭を中身を充実させることだな愚図が」



「痛い!!」




彼にしては珍しく消え入るような声での一つの単語に首を傾げた。
すると瞬時にいつもの調子に戻った彼から顔面へ分厚い本が投下されてしまって思わず間抜けな声を上げてしまう形となってしまう。




「あああカルラさん!!お願いですよにゃんって!!!にゃんって言ってくださいカルラさぁぁぁぁん!!!」



「煩い黙れそして死ね」



「だから!!どうして彼女に対してそんな扱い!!!!」



本を私に投下してから彼は机へ戻り他の本に視線を落としてしまったので
何度も体を揺すって懇願したけれどもう帰ってくるのはツン……というかもうなんか針とかナイフレベルのキツイお言葉だけで私の願いと叫びは華麗にスルーされてしまった。




meow……その言葉の意味。
彼が投下した分厚い本、英和辞書の理由。
そしてほんのり赤い彼の耳。




それら全てを紐解いて結び
私が盛大にデレデレになるまであと数分。





meow





それは英語で猫ちゃんの鳴き声



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