罪とその報い


俺にできた大切で守りたい存在…
もう絶対に傷つけないように、そっと抱き締めていたいと思う。





思うのだが…





「不服です。」



「仕方ないだろう。俺は花子…お前を愛してるんだ。」




俺の腕の中で最高に不機嫌な表情の最愛…花子の
どこまでもぶすっとした声色に抱きしめながらも大きくため息をつく。
彼女を本当に愛し始めてからこの戦いは毎日のように続いているのだが…俺は戸惑いしか感じないよ。




「誰がこんなに甘く愛してくれって頼みましたか私はあの日の様に革靴で踏んでもらいたいのに!!」



「いやだからあの時はほら…別に花子の事どうとも思ってなくて………くそう」



「首も絞めてくれなきゃナイフで自分切れとも言ってくれない!!!全くもって物足りない!!」



「…………。」



ぎゃんぎゃんと喚く花子を優し気に抱きしめながら彼女の言葉を聞いてげんなりだ。
花子と初めて出会った頃は本当にコイツの存在が鬱陶しくて目障りで…どうにかして遠ざけようとひどい扱いをしてきてしまったが
どこをどうしてこうなって愛してしまったかは分からない…
けれど彼女の存在がいつの間にか救いと癒しになっていたと気付いて自身の態度を改めたけれど…




時はもう全て何もかも遅すぎた。




「まさか俺の虐めに順応し過ぎて花子が救いようのないドエムになるなんて思ってないだろ…」



「せめてこの抱き締める腕も内蔵飛び出る位きつくしてくれたらいいのにさっきからなんですかこの壊れ物を扱うような力加減……全然足りないです」



「だから、花子を愛してるんだから大切に扱いた…」



「あああ!嫌だ!!そんな砂糖吐くような甘い言葉よりも消えろゴミ虫の方が興奮するのにー!!!」



………くそう。
今まで酷い扱いをしてきた分、大切にして愛して甘やかしてやりたいのに
すっかりドエスな俺色に染まり切ってしまった当の本人が断固としてそれを拒否してしまう。
彼氏に優しくされて不満とか何事だ。




「いやだ。花子……もっと愛したい。甘やかしたい…頼むよ、受け入れてくれって。」



「何ですか今までサディステッィクだったのに今度はいきなり砂糖菓子対応ですか私の事どれだけ振り回したら気が済むんですか」




くるりと腕の中で彼女の体を動かして対面の形をとって何度もオネガイと頬や瞼…唇にキスを落とすけれど
花子は未だに不満顔でそんな言葉を紡ぐ…
嗚呼、そうかもな……今まで酷く当たって蔑ろにしてきて気持ちが分かったからっていきなり態度を変えるのは俺の身勝手か。
けれど……





けれど俺はあんたを振り回す事になったとしても
今はこうして滅茶苦茶に甘く愛したい。





「花子には悪いと思ってる……俺がずっと酷くしてきたもんな。けど………俺の身勝手を許してほしい。」



「……………シュウさんが私をこんなのにしたんですよ?」



「ああ、分かってる。」




相変わらずむっすりと不満顔の花子に苦笑。
そうだ、彼女は俺の態度に順応しすぎただけ。
俺が酷く扱わなければ花子だってこんな歪んだ性癖にもならなかっただろう。
けれど…それでも少しばかり頬が赤くなってくれているのは僅かながらではあるが彼女の譲歩なのか。
漸く、俺の改めた愛を少しずつ受け入れてくれる気になった…?




「花子………愛してる。今までごめんな。」




「…………せめてベッドくらいは言葉責め希望です。」




「あーもうハイハイ、分かった分かった。あんたの望み通りベッドではいじめ倒してやるから今は甘く愛させろ。」



すっかり俺の所為で歪んでしまった彼女の性癖に暫くは寄り添わなければならないのだと
小さくため息をついたがこれも自業自得。
最愛を手酷く苛め抜いた報いがまさかこんな感じで現れるとは思ってもみなかったけれど…まぁ




これから少しずつ償って、同時に少しずつ甘く愛して
俺の罪を消していこうじゃないか。





(「ホラ、花子……キスだけでこんな顔になって……とんだ淫乱だなあんたは」)




(「声に甘さが残ってますマイナス50点。やり直しです。」)




(「…………お前いつの間にホント、真性マゾヒストになったんだ。まさか言葉責めでダメ出し喰らうとは思ってなかった。」)



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