middle&short
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    ジムリーダー及びチャンピオンが取材やスポンサーからの仕事を請けられるのは1ヶ月に何時間まで、という規則がありますので、あなたが想像しているような多忙なスケジュールはございません。
    また、20歳未満の方々は更に時間及び仕事内容に制限が課せられますので、やりたいことを好きなだけしてくださって構いません。
    本業はポケモンバトルとお考えください。


    ダンデがマスタードに勝利し、新たなチャンピオンとなって一番最初に、周りの大人達から言われた言葉が上記である。まだ幼さの残るダンデのことを真正面から見つめ、柔らかく説明を始めたのは、これからダンデのスポンサーになるという企業の人だったり、リーグから手続きのためやってきた人だったり。
    リーグからやってきた人に手を引かれて、家に帰ってからようやく実感が湧いたのを覚えている。
    リビングに通され、弟のホップを抱く母の隣に座ると、母は穏やかにダンデの頬をくすぐって、厳しい顔でリーグの人と話し始めた。


    月に何度か、雑誌の取材や広告撮影などをすることもあったが、それも日々の中で微々たるものだった。ワイルドエリアでのレイドバトル要請に、飛び込みで参加する回数の方が多かったとすら思う。
    チャンピオンになっても、好きなタイミングでバトルをしては友人と遊び、ガラル地方の隅々まで旅をした。剣と盾、そして鎧と冠の国。
    他の地方には見たこともないポケモンが沢山いて、ガラル地方にいるポケモンでも姿形が違ったり、生態も違ってくるらしい。そう教えてくれた幼馴染みに礼を言って、ワクワクした心を前面に出してどうやったら更にいっぱい冒険ができるのか調べた。
    周りの人に聞いてみたり、本の中にヒントはないかと探すのは楽しかった。本に埋もれながら、リザードンと一緒に夜遅くまで起きているのすら楽しい。
    本に尻尾の炎が燃え移らないようにソワソワしているリザードンの愛しさたるや。

    流石にジムチャレンジの時期は無理だったが、他地方への遊学はあっさり準備できた。もっと冒険したいと願うダンデに、周りの大人達が手を貸してくれたから。

    他の地方へ行ってみたり、ジムチャレンジではライバルやチャレンジャー達と熱いバトルを繰り広げ。チャンピオンとして何度目かの防衛に成功した際、親愛なるライバルがジムリーダーになるために勉学に励むという。何でも、歴史的建造物や遺物などを取り扱うことになるため国家資格が必要なのだという。
    なるほど、ポケモンだけでなく彼らと関わりを持つ人間達や過去の栄光から学ぶという手もあるのか。ライバルを応援すると共に、今度は学びの場を探した。
    あの男に、ダンデは絶対に負けたくない、置いていかれたくないのだ。

    そうして探し、いくつかに絞った案の中からこれだ、ここで学んでみたいと目標にしたのがナックルユニバースシティへの狭き門だった。
    調べれば調べるほど入学するのは狭き門で、たとえ入学できたとしても高度な内容の講義についていけるか、と目印にしては高いところにあるような場所だった。しかし生徒となるものに制限はなく、過去に行われた試験の内容を流し見ただけでも、知識欲の高いものだけが合格できるような内容なのだ。
    ダンデは、こういうシチュエーションに情熱的に挑み、冷静に見定めるのが好きだ。
    ようするに、無理難題をふっかけられようが、ポケモンバトルで最後の一体にまで追い詰められようが。
    燃える男なのだ。
    あどけない顔立ちの少年から、精悍さが目立つようになってきたこの頃。
    焚いた炎を消そうとするばかりか、更に火種ごと煽ってくるような彼に、彼にだけは負けたくないしカッコいいダンデを見せていたい。
    触るときっと冷たいあの双眸が、ダンデへの激情で引き上げられるのをもっと見たい。

    「キバナ!俺も大学に行くことにしたぜ!お互い頑張ろうな!」

    お互いにどこの大学を目指しているのか、話したことはない。
    必要ない。

    口元に手を添えて上品に笑う彼と入学式で偶然会った時には、人目も憚らず肩を抱き合って喜び、それから目尻に涙が溜まるほど笑い合った。
    お互いがお互いの目的のためにがむしゃらに励んでいたら、まさかまたはじめましてをすることになるとは。







    ジムバッジを持っている生徒は、特定の条件下では講義を受けられないため申請すればその講義はまた後日受けられる。
    というのも、ワイルドエリアでダイマックスしたポケモンの沈静化協力要請が緊急で飛び込んでくることもあるからだ。ほとんどがスタッフや一般トレーナーの手によって沈静化されるが、人手が足りない際は生徒への呼びかけもされることがある。
    だが、ダンデもキバナも生徒となってから協力要請に飛んで行ったことは数える程もない。何故ならナックルユニバースシティの教授等を含む職員達が喜び勇んで駆けつけるのだ。
    講義を行うのは基本2人1組体制の教授で、1人がレイドバトルに行っても、もう1人が講義を行うような形になっている。ダンデはこの大学の求人情報をリーグ経由で見たことがある。他地方を含めバッジ保有者がわんさかいるのも仕方ない、あの求人では。

    新しい経験、未知なる体験、専門的な知識を得るのは本当に楽しい。
    旅で感じるワクワクとはまた違った種類のもので、そんなダンデが面白くて仕方ないと笑うライバルも楽しそうだった。
    彼が楽しそう、嬉しそう、幸せそうだとダンデもハッピーになれてお得感があって良い。

    「キバナ、来期一緒に特殊飛行許可の講義受けないか?もしよければ、なんだが」
    「ダンデはオレさまの先回りをするのが好きなの?」
    「エッ、何故そう思うんだ」

    あと数年もすれば、ダンデもキバナも酒を飲める年齢になる。その前に、アルコールについて予行練習も兼ねてどうだろうと誘ったら、想定外な返事をされた。
    何より、ダンデのリザードンとキバナのフライゴンで並走する空の旅というのがしてみたい。というのも、ライバルと空中戦がしてみたいというリザードンの希望もあるのだけれど。

    「フ、フ。オレさまもその講義とろうと思っていたから大丈夫だ」
    「そうか!よかった!キバナと一緒に過ごす時間が増えるのは何であれ嬉しいな。ありがとう」
    「先回りすることじゃなくてオレさまが好きなわけね、ハイハイ」
    「まったくその通りだ」

    真面目な顔で頷く。
    特殊飛行許可という名目の講義は、人間を乗せて飛べる、または人間を運ぶことのできるポケモンをゲットしているトレーナーに限り選択できる講義だ。
    指定された内容の講義を受講し、課された課題をこなし、実習を含むフィールドワークをクリア後、資格試験への受験資格を得られるという。
    ダンデがリザードンと空を駆けるためにはこの資格が必要だし、もしも自分以外の誰かをリザードンに運んでもらうことになったらその際にも必要な資格だ。
    アーマーガアタクシーの運転をする人達はみんなこの資格を持っている。合格ライン脅威の9割8分。
    命を預かることになるのだ。

    空を飛べるポケモンの生態系から始まり、翼を持つものはその仕組みや役割を。
    また、人間とのコミュニケーション能力も併せ持ったポケモン、そしてトレーナーでなければならない。アーマーガアタクシーの普及に一役買ったという教授の元、相手の命を預かり、また預ける覚悟を決めていくための講義だった。ポケモンの骨格や特性、タイプによる天候への適応能力等、講義の内容は深いものが多い。
    キバナと共に講義を受け、共に過ごす時間が更に増えるとお互いの手持ちポケモン達も随分と気安くなっていた。
    ナックルユニバースシティ内の土地は広い。講義を受ける棟は連なり、生徒や職員、野生のポケモン達のために水場はもちろん山や草原を模したエリアもあり、併設されている図書館はガラルで1番の蔵書率を誇る。

    ちょっとした滝や湖、川の淡水を味わうのが好きなポケモン達が集まる水場には、よくキバナのヌメルゴンが姿を見せる。
    ひっくり返ってワタワタと慌て、やがて全てを諦めた様相のハスボーを起こしてやっていた。ダンデはハスボーがひっくり返った時点で起こしてやろうとゆっくり近付いていたのだが、それよりも先にヌメルゴンが動いたのだ。
    ハスボーを怖がらせないようにゆっくり近付くダンデを、何をやってるんだこいつは、と親にそっくりな顔で見つめながらさっさと起こす姿は本当にキバナにそっくりで…。

    巷ではヌメルゴンの世話を焼くキバナの人気が高いが、ダンデはいつもその話を聞いて首を傾げていた。こんなにも親に似ているのに?
    穏やかな面差しと緩められた眦なんてそっくりだし、困っている相手が気付く前に手助けをしては軽く去っていくような。
    事実、ヌメルゴンがハスボーを手助けしているのを目撃した日からさりげなくダンデも世話を焼かれている。水場付近で休憩がてら読書をしている時など特に。
    普段ダンデに擦り寄ってくるポケモン達が邪魔にならないように、その触覚や手足を上手に使って遊び相手になっていたり。

    次の講義へ向かうダンデをエスコートするのなんてもう何度目か。はじめの頃は何だか申し訳なさが勝ってしまって断っていた。素直に引き下がる所もスマートで、ダンデは本当に頭が上がらない。
    触ると粘液まみれにしてしまうのを少し気にしているのか、キバナが講義を受けている日などはよく水場付近にいた。ダンデの意識が他所へ行かないように、適度な距離感で数回にわたり声をかけてくれる。
    それが何だか面映ゆいけれど、ライバルの可愛い紅一点なドラゴンレディに甘やかされるのが恥ずかしくて嬉しい。
    彼女のしなる触覚やパワフルな体躯から繰り出される技の美しさと強さを知っている。

    「ヌメ」
    「うん?ありがとうなヌメルゴン!おかげで講義に間に合ったぜ!」

    うんうん、良かったね、とでも言っているようなヌメルゴンはまた水場に戻るのだろう。お礼を言ってまたお邪魔するかもしれないと伝えれば、ふうわりと微笑んだ彼女がダンデの髪をぺちょ、と撫でた。撫でた。撫でた!!???
    あの!!!!ヌメルゴンが!!!??
    相手を粘液まみれにしてしまうことを気にして自分からは滅多に人間や建物なんかも触らないヌメルゴンが!!!?

    ぺちょぺちょ、と撫でる手を止めないヌメルゴンは、微笑んだままだ。きっと今彼女は、気にしていることを一瞬でも忘れて、素の状態でダンデを慈しんでくれている。

    それが何だかとんでもない事のように思えて、いや実際とんでもない事なのだが。水場に戻るヌメルゴンに手を振りながら、ご機嫌な後ろ姿を見送る。
    ヌメルゴンの姿が見えなくなったところで、何がなんでもこのヌメルゴンに撫でられた証拠を相棒やキバナに見せなくては、と使命感に駆られる。
    あぁリザードン、どこにいるんだ。草原エリアでひこうタイプのポケモン達と速さ較べでもしているのか。

    その後、ダンデはヌメルゴンの粘液でぺちょぺちょのまま講義を受け、キバナを探して敷地内を走り回った。ようやくキバナを捕まえた時には髪についた粘液は乾いてパリパリになっていたが、嬉しそうなダンデが遠くから全速力で走り寄ってくるのを見たライバルは、笑いすぎて動けなくなっていた。
    もう酒が飲める年齢になっていたダンデは、同じく酒が飲める年齢になったキバナと複数の友人を巻き込んで飲みに行ったし見事に酔いつぶれた。
    急に誘ったのにも関わらず、友人達はダンデの喜びを祝ってくれたし、ヌメルゴンの親であるキバナはずっと笑い転げていた。テンションが最高潮なダンデが愉快だったようだ。









    嬉しさのあまり三日三晩踊り狂ったダンデが落ち着いた頃。
    慣れてきたのもあるだろうが、休憩をとれる時間がだいぶ出てきた。そしてその休憩を、天気がいい日は草原エリアで昼寝をするのがとんでもなく贅沢な時間だ。
    程よく風も吹き、空にはリザードンが羽ばたく力強い音がして、野生ポケモンや、ダンデ、キバナのように自由にポケモン達を外に出しているトレーナーのポケモンたちも多い。
    横になって夢現なダンデは、昼寝ももちろん楽しみなのだが、それよりもずっと楽しみなことがある。ダンデが昼寝を始めると、たまにどこからともなくやってきたポケモンが日差し避けになってくれることがあるのだ。そのポケモンは、煌めく体をダンデの為に静かに寄せて、佇んでいる。

    そのポケモンがダイマックスした姿を、ダンデとリザードンは何度も見た。現に、空を飛ぶリザードンがこちらを気にした素振りも見せない。このポケモンがいるなら大丈夫だと信頼しているからだ。
    ポケモン同士に結ばれた強い絆ともいえるものが垣間見えて、この時間が好きになった。きっと、彼の主人にも同じように日差し避けになる事があるのかもしれない。おそろいのようで、少し照れてしまうが。

    「………いつもありがとうな、ジュラルドン」

    薄目を開けてそう言えば、こちらを見もしない彼の口元が、緩んでいるのがわかる。
    チャンピオンになり、他地方を冒険し、己を鍛え上げ、パートナー達と育んできた日々は誰にも負けるつもりは無い。
    けれど、キバナは別格だなとしみじみ思う。バトルに誘い、いつも二つ返事で了承してくれるのはキバナだけだった。他の友人達へ不満がある訳でもない。断られる時はしっかり理由を教えてくれるし、すぐには無理でも後日なら大丈夫、と頷いてくれることも多い。

    彼だけがいつも、朗らかに頷いた後激情の元に刃のような瞳でこちらを見る。
    それは公式戦での針よりも痛みを伴うバトルの時もあれば、お互い酔っ払って吹っかけたバトルの時もある。ダンデが興奮して床に叩きつけた上着をキバナは素早く畳んで机の上に置いた。
    その後あの猛るような咆哮をするもんだから、ダンデはもうやられてしまってダメだった。ダンデが楽しい、嬉しいと感じた時にはいつもキバナがそばにいる。前々から好意を持ってはいたが、それが恋だと気付いたのはこの時だ。

    「許可証はもらえそうか?」
    「当然」

    眇めた眼差しの奥に、緊張が落ちている。ダンデも同じだ。
    先日受けた特殊飛行許可試験の結果発表を、2人で待っていた。スマホロトムに、指定された時間に通知が来れば合格、来なければ不合格。ダンデもキバナも、合格を疑ってはない。

    もう合格祝いをする為のディナー予約は済んでいた。








    ナックルユニバースシティの卒業式で、帽子とガウンを身に付けたキバナは理知的な魅力に溢れていた。
    壇上で手短に挨拶をする職員の言葉を、凪いだ表情で眺めている。

    卒業が近付くにつれて、ダンデには悩みがあった。
    キバナとの距離だ。どうしたって、生徒同士であった頃に比べると、ジムリーダーとチャンピオンでは会える機会も減る。キバナへの好意を隠すことなく過ごしてきた自信はあるし、キバナもダンデへの好意を抱いていてくれると確信がある。
    けれどお互い言葉にするには大人になってしまった。

    これから先、未来での立場、環境の変化。ダンデの苦悩は膨らむばかり。






    悩んでいても仕方ない、行動してみようと動き出せば、過去に感じたことのある感覚がした。拍子抜けした、その感覚。
    友人やジムリーダーの皆、ダンデが幼い頃からの付き合いのあるスポンサーやリーグ運営スタッフ。分からないようにぼかしてぼかして相談してみれば、まず好きな人がいることを祝福され、そして悩むダンデを応援された。

    その頃だ、ダンデがチャレンジャーの少年に負けたのは。新しいチャンピオンの誕生に、敗北の悔しさと、これから先どんなことが待ち受けているのか、どんなことに挑戦できるのかと期待は膨らむ。
    悩みで膨らんでいた場所は、期待で満ちた。

    バトルタワーを新たに作り上げ、運営も軌道に乗ってきた頃。チャンピオンにエキシビションマッチを依頼された。相手はチャンピオンではなく、ダンデの親愛なるキバナ。
    なるほど、さすが鋭い観察眼をしている、と鼻先で笑ったダンデは、バトルタワーの屋上へ駆けていってそこからリザードンに乗せてもらって飛び立った。


    キバナとのエキシビションマッチ。控え室で久しぶりに話す彼は少し痩せたように見えた。
    しかし再びこの場所で戦えることが楽しみなのはお互い同じだった。

    照りつける灼熱、砂塵の一粒…繰り出されるのは洗練された至高の一撃。
    なんて楽しい、胸の踊る。

    彼と共に過ごすにはどうしたらいいのか考えた。知人では到底満足出来ず、友人では物足りない、ライバルだけではもっと欲しくなる。
    その考えた結果を、キバナに伝える時が来た。

    「キバナ!───んだ!結婚してくれ!」

    スタジアムの歓声の中、彼の爪先へ跪いて煌めきを差し出す。目を見開いて驚く彼が、愛おしくてたまらない。


    「ふ、フフ、さてはおれサマのことも好きだし先回りするのも好きだな?」


    悪戯っぽく笑って、彼がダンデの爪先へ跪く。
    どうして跪いているんだ彼は。
    ───────差し出された輝きに、今度はダンデが目を見開いて驚いた。
    呼吸をすることすら忘れていたので、ここがスタジアムのコートの中で、客席には沢山の観客がいて、中継も繋がっているのを思い出すためには何か強い衝撃が必要だった。
    実況者の、『ダブルプロポーズだァーーーーーー!!!!!!!』という叫びが聞こえてくるまで、2人して跪いて愛を誓っていた。いつだったか、ナックルユニバースシティでキバナを誘った時にも似たようなことを言われた。
    そうだな、俺はきみのことが好きで、きみと俺は考えが似ているところもあって、全く違うところもあるんだな。
    うん、最高じゃないか!








    結婚式には、お互いの家族を始め、ジムリーダーの皆や学生時代の友人、お世話になった教授、付き合いの長いスポンサー各位も呼んだ。
    今ならわかる。幼い頃、ダンデの手を引いて母の元へ挨拶をしに行ったリーグ運営スタッフは、ダンデを含めた周りの皆を守ってくれていた。
    家族や友人、お世話になった人達が『チャンピオン』の肩書きを持つ少年を慈しんだのと同じように。
    このガラルでチャンピオンになったことは、この上ない僥倖だった。

    親しい仲の方々で式をあげた方がいいのでは?と問い合わせが来たが、キバナと一緒になって「だから呼んだ」と返した。


    結婚式の打ち合わせは滞りなく進んだが、1番時間がかかったのはおめかしについてだ。
    ダンデとキバナの衣装ではない。

    2人のポケモン達のおめかし。皆の前で、結婚することを報告した際にはわあっと盛り上がってキバナなんてリザードンに持ち上げられてしばらくクルクル回されていた。機嫌よくリザードンに抱っこされているダンデのパートナー、そして喜ぶリザードン。
    相棒が喜び、キバナがご機嫌な姿を眺めるのは珠玉であった。この光景で酒が飲める。

    「ダンデのポケモンとオレさまが仲良しなの、知らないだろ?」

    笑いを含んだ声音で、リザードンに抱えられたキバナが言う。それを言うなら、ダンデだってキバナのポケモンと仲良しだ。

    「キバナのジュラルドンは俺の日差し避けになってくれるぞ」
    「ダンデのリザードンはよくオレさまを抱え込んで寝るな」
    「キバナはヌメルゴンにエスコートされたことあるか!?」
    「オノノクスにハグされたことはあるのかダンデ!?」

    なんだそれは知らないぞ、とお互いのポケモンを見る。
    喧嘩?とこちらの様子を伺っているポケモン達をみて、お互いの顔を見て、そして似たタイミングで吹き出してしまう。チクショウ、自分の手持ちポケモン達には最初からお見通しだったのが発覚した。
    主人の、大切なトレーナーの大切な相手だから、そして何より自分自身が気に入っているからというのもあるのでしょう。

    知らないうちに包まれていたことに笑ってしまって、衣装合わせどころではない。リザードンに似合う蝶ネクタイを見つけたのに。なんてことだ。

    「結婚式の余興では何がしたい?」
    「それを考えるだけでも楽しい」
    「そうだな、これからが楽しみで仕方ない」


    未来は明るく、彼らは柔らかなもので包まれている。




    蛇足
    バトルタワーに挑戦しに来たキバナさんにモンスターボール級用の調整がどうしても出来ない、でもバトルはしたい、その結果オーナー執務室で手持ちポケモンに捕縛されている間に代理として要請が来た弟が召喚されたりしている。

    キバナさん視点ではリザードンと一緒にお昼寝しているしオノノクスから親愛を込めてハグされている。
    オノノクス、牙や爪がキバナさんを傷つけないように慎重に慎重にハグしているので弱々しい力ですが毎回キバナさんにこれくらいなら大丈夫だからやってごらん、と教えて貰っている。

    手持ちポケモン全員のエピソード考えていたけど入り切らなかったので没にしました。

    プロポーズの───んだ!のところはお好きなフレーズを入れてどうぞ。

    読了ありがとうございます。



    ALICE+