chapter:Bump~運命の出会い いったい、どれくらい走っただろうか。 オレを探す兵士たちの目をくぐり抜け、小道から、さらに細い小道へと逃げること30分くらい。 入り組んだ道を抜け、引っ張られるままにやって来たのは、この男の家だった。 男の家は、やっぱり大きくて、オレが思ったとおりの金持ちだった。 男は木戸を開け、玄関を通った先の、応接間にオレを通す。 目の前にあるテーブルには、リンゴやらバナナなんかがカゴの中で山積みになって入っている。 「腹が減っているだろう?」 男はそう言うと、掴んでいたオレの腕をやっとのことで解放し、果物が乗っている目の前のカゴを差し出した。 「…………」 腕を引っ張られ、どこに連れて行かれるのかと思いきや、他人を――しかも、さっき会ったばかりの人間を軽々しく自分の家に上げるなんて、この男……。 頭がどうかしているんじゃないか? ――いや、そうじゃないかもしれない。 この男は、一度オレを安心させておいて、盗みをはたらいた経緯なんかを聞き出した後、兵士に明け渡す気なのかもしれない。 金持ちのお坊ちゃんすぎて世間知らずの阿呆か――。 それとも、かなり嫌みな陰険野郎か――。 この男は間違いなく、そのどちらかだ。 だけど正直、この男がオレをどうするつもりなのかは、オレ自身、たいした問題じゃないと思っていた。 |