アラビアン・ナイト
第二話





chapter:Bump~運命の出会い







いったい、どれくらい走っただろうか。


オレを探す兵士たちの目をくぐり抜け、小道から、さらに細い小道へと逃げること30分くらい。



入り組んだ道を抜け、引っ張られるままにやって来たのは、この男の家だった。



男の家は、やっぱり大きくて、オレが思ったとおりの金持ちだった。


男は木戸を開け、玄関を通った先の、応接間にオレを通す。

目の前にあるテーブルには、リンゴやらバナナなんかがカゴの中で山積みになって入っている。


「腹が減っているだろう?」


男はそう言うと、掴んでいたオレの腕をやっとのことで解放し、果物が乗っている目の前のカゴを差し出した。




「…………」


腕を引っ張られ、どこに連れて行かれるのかと思いきや、他人を――しかも、さっき会ったばかりの人間を軽々しく自分の家に上げるなんて、この男……。



頭がどうかしているんじゃないか?



――いや、そうじゃないかもしれない。


この男は、一度オレを安心させておいて、盗みをはたらいた経緯なんかを聞き出した後、兵士に明け渡す気なのかもしれない。



金持ちのお坊ちゃんすぎて世間知らずの阿呆か――。


それとも、かなり嫌みな陰険野郎か――。



この男は間違いなく、そのどちらかだ。


だけど正直、この男がオレをどうするつもりなのかは、オレ自身、たいした問題じゃないと思っていた。





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