そんな俺の目の端では、見たくもない目障りなほどの真っ白な生地がチラつく。 その純白の生地を目に入れると、否(いや)が応(おう)にも、ふんだんに取り付けられている白のレースとリボンが見えるわけで……。 気分は最悪。 それというのも今の俺は、『篠崎 亜瑠兎』ではなく、『篠崎 花音(かのん)』なのだからーー……。 ちなみに俺の左側には袴(はかま)姿の父さんと、右側には黒の着物を着た母さんがいる。 その母さんの隣には……考えたくもない。 俺が16の誕生日に母さんから手渡されたスーツと赤い蝶ネクタイを身につけた花音が平然と座っていた。 あ〜、腹立つ!! 何に腹が立つかと:訊(き)かれると、母さんの隣にしれっと座っている花音にではなく、花音のワンピースが問題なく着こなせる自分が何よりも一番腹が立った。