chapter:▽・w・▽つ【わんわんほりでぃ〜】 「なんでこんな簡単な数式もわからねぇんだよ!!」 上から抗議するのは、ぼくがいる1年B組クラス委員を務める飯塚(いいづか)くん。 「うう……ごめんなさい」 どうして怒られているのかっていうと、数学のテストの点数があまりにも悪いせいだ。 数学担当の山川(やまかわ)先生――通称ヤマ先に委員長から3日後にある数学の授業で行われる小テストまでに数学を教えてもらうようにと言われた。 今の時刻は、オレンジ色が教室内を包んでいる下校時刻を過ぎた午後4時30分。 「泣いてもはじまらない。ここ、小テストの範囲内だからさ。ほら、頼むからさっさと解いてくれよ〜。 俺、ダチと一緒に今からバスケしようって約束してんだよ」 委員長は短い黒の髪をわしゃわしゃと掻いて窓の方を見る。この窓から見下ろせば、そこはちょうどグラウンドになっている。 ぼくがいるこのギクシャクしたこの教室とは正反対の、明るい声がここまで聞こえてくる。 「……ごめんなさい」 委員長の手間を取らせてしまっているんだとそう思えば、ぼくの目からは涙があふれてくる。 これじゃ、数式なんてまともに見れやしない。 だから必然的に手が止まってしまう。 そうしたら、委員長は落胆した、なが〜い、ため息をつくんだ。 余計に怒らせてしまったことに気がつく。 「ごめんなさい」 肩をすぼめて唇を噛みしめるぼく。 |