▽・w・▽つ【わんわんほりでぃ〜】
第二話





chapter:▽・w・▽つ【溺愛ほりでぃ〜】







皆さん、こんにちは。
えと、ぼく、千羽 一(ちわ いち)っていいます。

1年B組。
性格は面白くもなんともない上に勉強が苦手で、家庭科が大好きな女々しい奴です。

そんなぼくでも、なんと好きと言ってくれる人が現れました。

同じ学年で、C組の金色 奏(かないろ かなで)くんです。

金色くんは、とってもカッコよくて、背も高くてスポーツ万能。加えて優しいから、女子に人気です。


その彼に、ぼくは今苦手な数学を教えてもらっています。

それはとっても嬉しいです。

だって、ぼくも金色くんが好きだから……。

こうやって、放課後の教室でふたりきりでお勉強を見てくれるの、すごく嬉しいです。

とっても苦手なお勉強だけど、大好きな人と一緒にいられるのなら、これも悪くないなって、そう思うです。

なのですが……。

ぼくは今、少し困っています。


と、いうのも――……。

「あの、金色くん……顔……」


ぼくの顔と金色くんの顔がかなり至近距離なんですっ!!

これじゃあ、緊張しすぎて呼吸できない。


「うん?」

それがわからない金色くんは、宿題のプリントを穴が空くほど見つめているぼくを見る。


うえええん!! よけい、顔が近くなっちゃったよっ!!

オレンジ色の夕日に照らされた教室にいるぼくと金色くん。

だから、ぼくの顔が赤くなってもきっと夕日のせいにできる。


だけど、でも……。

緊張しすぎて出てきちゃった涙は隠せない。

こんなんじゃぼく、金色くんに気持ち悪いって思われちゃう。


いつまでもウジウジしてたらイライラされる。

どうしよう。

どうしよう!!


とにかく、このあふれてくる涙を引っ込めよう。

そう思うのに――焦ったら焦った分だけ涙があふれてくる。


「どうしたの? なにかわからないところ、あった?」

優しい優しい金色くんは、緊張しすぎて、嫌われるっていう悲しみで涙をにじませるぼくを覗き込んできた。


「ご、ごめんなさい……」

泣き虫でごめんなさい。

女々しくてごめんなさい。

勉強ができなくてごめんなさい。

たくさんの『ごめんなさい』が、目にあふれた涙と一緒にポロリとぼくの口からはじき出される。

挙げ句の果てに、ぼくはとうとう、えぐえぐとシャクリを上げて泣きはじめてしまった。

泣き止もう。
早く泣き止まないと嫌われる。

そう思うのに、涙は止まらない。


「っうえええっ」

子供みたいに泣きじゃくるぼく。


「イチくん……」

ほら、金色くんがため息混じりでぼくの名前を呼んでる。

嫌われる。

――ううん、もう、嫌われたのかも……。


「ご、ごめんなさいっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ、うぇええっ」

嫌わないで。
嫌いにならないで。

そう願うぼくは、ほんとに女々しい。

男なのに、情けない。

大粒の涙はボタボタと落ちて、プリントが水玉模様になっていく……。


「イチくん……」





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