波のざわめき.13
微笑んだ海斗に、マイヤは訝しげな表情を向ける。
「以前にもそう言われた事がありますけど、何処がそんなに似ているんでしょうか」
「何処とははっきり言えないんだけどね、何となく」
いつかも言った言葉を繰り返す。
本当に似ている。
自分に余裕が無くても人の痛みを受け止めてしまうところとか、人の為に理由など無くても一生懸命になるところが。
だから、だからこそ思う。
思っても考えても仕方無い事を。
「……もしも、もっと早くに君みたいな人に出会えていたら、少しは違ったかな」
「はい?」
もしも、あの最も辛かった時期に出会えていたら。
もっと早く出会えていたら、そうしたら今、こんな風に下手な作り笑いをせずに済んだのだろうか。
そっと木の幹に手をつき、マイヤの耳元で囁く。
「ま、もしもの話だけどね」
自分にも分からない感情に、心がざわめく。
ざわめく想いは止まらない。
止められない。
いつも切なく胸を打って、暖かく満たす。
だからこそ、今真剣に考える。
幸福になる為に、何をすべきか。
止められないざわめきに、想いを馳せて。
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