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今日の校内は、何となく落ち着かない。

きっと生徒達がそわそわしているのが空気に伝わっているのだ。

休み時間になれば多くの女生徒が綺麗にラッピングされた包みを手に、この三年A組の教室を訪れる。

彼女達の目的は、大体決まっている。

このクラスの霧里【きりさと】時雨【しぐれ】に、何とかしてチョコレートを渡そうとしているのだ。

その後ろの席に座っている霧谷【きりたに】夏雪【かゆき】は、異様な雰囲気の前方を見て溜息をついた。

バレンタインデーが、偶然もう学校に来る日自体が少ない三年の登校日と重なればどうなるかは予想していたけれど。

まさかこれ程とは思わなかった。

時雨と夏雪とは幼稚園から高校までずっとクラスが同じで、出席番号も前後で席も近いという幼馴染だ。

昔は手を繋いで帰ったり、一緒に遊んだりするのが当然だった。

何も話せない事なんて無かったし、お互いの考えが手に取るように分かった。

それが、いつからだろう。

男子と女子とでグループが別れて、あまり話す事も無くなって。

いつの間にかこんなに距離が開いてしまった。

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