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あのライブの日から、僕は和樹のギターを少しずつ弾くようになった。

もう一人の自分が残して行ったものを受け継いで、忘れたくなかったという思いもある。

でもそれだけではなくて。

僕自身が此処に在る証を何か残したかった。

この方法で良いのかは分からない。

いつか別のやり方を見付けたら、そっちを取るかもしれない。

けれど今はただ無性に。

音楽を、この手で奏でてみたかった。

学校から帰った後や休みの日に、勉強の合間を縫って自力で練習した。

最初はとても人に聞かせられるようなものではなかったが、練習を重ねる内に少しずつメロディーを辿れるようになって来た。

和樹の書き込みが残る楽譜を目で追いながら、僕の片割れは何を考えてこの曲を弾いたのだろうと思った。

それはまるで、和樹との共同作業のようで。

僕の音楽は一人で創る世界ではなくて、二人で創り出すと思えて。

まだ生きているんだ。

和樹は此処に。

僕の中に、音楽の中に。

その事を実感出来たから、ギターを弾く事がどんどん楽しくなって行った。

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