solitaryfight.32


「蒼の趣味は、女の人を口説く事だと思ってたから。星空を見るのが趣味なんて意外とまともだなって思ったの」

「……どいつもこいつも、俺を何だと思ってるんだ」

華憐は笑って再び望遠鏡を覗く。

「でも私は、それだけじゃないって事もちゃんと分かってるよ」

『分かるよ。泣きたい時に笑っていても』

不意に以前の言葉が響いて、思わず華憐を見詰める。

「男の人ってどうして、大切な事を隠しちゃうのかな。何でも一人で決めてどんどん先に行っちゃって。追い掛ける方は大変なんだから」

それは蒼に話しているというより独り言に近かったので、蒼も何も言わなかった。

誰の事を言っているのか、少し疑問には思ったけれど。

「……なあ、華憐。あんたの願いは、何なんだ?戦いが終わったら、何かしたい事はあるのか」

しばらく黙っていた蒼が、やがて静かに口を開いた。

「向こうの世界では、流れ星に願い事をすると叶うと言うけどな。あんたの願いは俺が叶えてやるよ。手の届かない星より確実だろ?」

叶えてあげたい、自分に出来る事なら何でも。

「国とか王女とかそんなの置いておいて、あんたの願いが知りたい。俺はそれが叶えられる為なら、何でもするから」

星に煌めく眼差しが一瞬交わり、静かな夜に誓いの言葉は溶けて行く。





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