dreamland.21


「……はぁ、そうですか。頑張って下さい」

関心が無い口調で労った華憐に、蒼は笑って言った。

「ああ。それと、あんた身分を隠して活動するつもりならその喋り方何とかしろよ」

「はい?」

「そのままじゃ、どうしても良家の生まれだと分かっちまうぞ。俺に対して敬語じゃなくていいし、蒼って呼べばいい」

華憐は戸惑ったように蒼を見る。

「でも、見ず知らずの男性に対してそのように気安くする訳には……」

「もう見ず知らずじゃないだろ」

「……まあ、それもそうで……そうだね。頑張る」

「よし、じゃあ行くか」

すぐ近くへ行くような調子で、蒼が軽く言う。

「……うん」

頷いて、華憐は辺りを見回した。

夜の更けた駅前は人もまばらで、こちらを見ている者はいない。

見上げれば空には満月。

静かな月が、自分の中の魔力を高めてくれる。

今なら開く、もう一つの世界への道が。





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