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「じゃあ、もしもそんな時が来たら、捜しに来て下さいね」
そんなのは悪い冗談だろうと、笑い飛ばしたいのに。
どうしてか、それは出来ない。
揺らがない意志が、巫女の全身から感じられた。
まるで、大地と出会うずっと前から決めていた事のように。
だからもう、何も言えなくなってしまって。
けれど翼が、柔らかな微笑みで付け足してくれたから。
「待っていますね。大地さん」
その言葉だけは、自分との出会いがあったからこそ生まれたのだと思えたから。
彼女にとって今は話せず譲れないものがあっても、共に過ごした時が決して無駄ではないのだと思えたから。
大地は無言のまま頷いた。
信じようと思えた。
例えその時が来てしまっても、また会えると。
捜し続ければ、必ず会えると。
まだ知らない彼女の事情ごと、全てを信じようと心に決めた。
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Reservoir Amulet2