18
「うちかて出せるもんなら出してる!」
僕が北の森に到着した時には転入生らしきツインテールの周りでクラスメイトの委員長と今井さんが炎に囲まれてる所だった。
「凪っ!棗の炎を消して!」
僕の存在にいち早く気付いた流架が駆け寄ってきた。
「流架‥‥。ごめんなさい‥‥僕のアリスじゃ、棗の炎は消せない‥‥」
そう。僕のアリスは僕自身が生み出した炎しか操ることが出来ない。
「棗、やり過ぎだよ」
どうしてこんな状況になったのかはわからない。けど、みんなが苦しそうにしている。今井さんも、委員長も。転入生の女の子だって顔が真っ青だった。
「凪‥‥。お前は黙ってろ。」
「棗‥‥」
頭に血が上ってしまった棗に僕の言葉は届かない。こうなったら力強くにでも‥‥。
そう考えていた時、流架といつも一緒にいる兎に棗の炎(アリス)が引火した。
「流架っ?!」
その兎を助けようと突然走り出す流架。その行動に気を取られて一瞬棗の力が緩んだその時、
「火ぃ止めろバカ!」
転入生が棗に飛びかかった。
「ッ棗止めろ!!!」
棗がとてつない大きな力(アリス)を飛びかかってきた転入生に向けて放とうとする。それに気付き叫んだ瞬間
こてん‥‥
「え‥‥」
「今、棗は確かに強いアリスを‥‥」
ぶちゅーーーーーvvv
「鳴海先生‥‥」
みんなが今起きた出来事にただ呆然としている時、森の茂みから出てきた鳴海先生が棗のおでこにキスをして失神させた。棗は人一倍フェロモンに弱いから‥‥。
「棗、大丈夫かな‥‥?」
「大丈夫だと思う。」
心配そうに棗の顔色を伺う流架。本当に、棗の事大好きなんだろうなって思う。
棗が気を失っている間に転入生こと佐倉蜜柑の入学が正式に決まった。アリスは無効化。僕みたいな攻撃しか出来ないアリスと違って誰かを守ったり、何かを打ち消したり‥‥。
「‥‥」
なんだか僕とは全然違う。そのアリスはきっと、棗を終わりのない真っ暗な闇から救ってくれる気がした。
「あ、あの!うち佐倉蜜柑言います!」
「三条凪‥‥よろしく」
僕の視線に気付き佐倉蜜柑が僕に自己紹介をした。
例えるなら、向日葵や太陽のような眩しすぎる笑顔。あまりにも眩しくて目を逸らしてしまう。
「あの、さっきは棗が‥‥ッ?!」
棗が君の友達を危険な目に合わせてしまってごめんなさい。
そう言おうとした時だった。とても強い力で後ろに引っ張られ尻餅をついた。
大きな爆発音と共に当たりの木々が燃え焦げ臭さが充満し出す。その匂いに思わず噎せ返りそうになる。
「ナルッ、てめえぶっ殺してやるッ」
フェロモンのせいで体調が万全な状態ではないのに爆発を起こした棗は息を荒げながら鳴海先生をキツく睨みあげた。
棗が腕を引いてくれなかったらたぶん僕は真っ黒コゲになってた。
「流石に僕でもこれは庇いきれないよ」
ウーーーーーーッ
学園の中に響き渡るのは聞きたくないサイレン。
「棗ッ、早く逃げよう」
じゃなきゃ、ペルソナがッ‥‥。
必死に棗の制服を握り締め引っ張る。
棗が佐倉蜜柑になにか煽る様なことを言いそれに対して叫ぶ彼女の言葉を聞きながらその場を3人で逃げるように後にした。
「棗、凪、ここにいたのか‥‥」
「ペルソナッ」
3人で逃げてる途中にペルソナに見つかってしまった。
「る、か‥‥なつめ、先に行ってて」
これから起こることが分かっているから、流架と棗にかける声が震えてしまう。
「さっきの爆発、僕がやりました‥‥」
「凪ッ」
「罰は僕が受けます」
棗は鳴海先生のせいで体調が良くない。ここは初等部校長の“お気に入りの犬”の僕が行けば少しは彼の負担が少なくなるはず‥‥。
そう思いペルソナに近づく。
早く。
早く二人とも逃げて。
「校長からの伝言だ」
僕の願いは虚しく散った。
「今日の“お仕置き”は棗と一緒に、だそうだ」
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