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念力でねじ曲げられた軌道により、ボールは凪の顔面に当たった。その勢いで口元につけていたアリス制御面が外れ地面に落ちた。
ぽふんっ
それと同時に凪の頭にきつね色の毛色をした耳が現れた。
まだ妖変化のアリスは常に放出しっぱなしで、上手に制御できずにいた。
「なにそれーー!!!猫耳ー?!」
僕のアリスを初めて見た佐倉さんが騒ぎ出す。周りの子たちも一緒になって群がってきた。
「触ってええ?!なあなあ!」
「え、あ‥‥」
顔痛い‥‥。
早くコートの外に出たい気持ちが、佐倉さんのキラキラとした期待の瞳に押し負けてしまいそうになる。
地面を見つめるように俯いたままどうしようか悩んでる時、
「凪、コートの外行こう」
「流架‥‥?」
「とっとと始めるぞ、水玉」
「なんやと棗ぇー!?」
2人のお陰でみんなの意識が再びゲームへと向く。
二人は、いつも助けてくれる。
困った時とか慣れないことがあった時、二人がいてくれたから未完全な僕は今ここにいる。
だからまだ、濁りの濃い闇に引きずりこまれずに済んでいるのかもしれない。
この先、這い上がることの出来ないほどの闇に落ちることも知らずに。
近くにあるベンチに座って、コートを見る。
棗も流架も歳相応の顔をして一生懸命ボールを追いかけたり、投げたり。
これが僕らの当たり前のはずなのに、
「喉乾いた‥‥」
「凪、来なさい。」
「ぁっ‥‥」
どぷんっ
また少し、足元が黒く抜けれない程に沈んでいく音がした。
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