1.夢

昔の夢を見る。
お父様もお母様も体が弱くて、小さい頃の私には友達もいなくて、1人ぼっちで遊んでいる時の夢を。

今はもういないから言えないけれど、もしも今お父様とお母様がいたなら、体が弱いから無理しないで、なんて言えるけど小さい頃の私はワガママで、2人の体の調子がいい時は外へ連れてってと言ってよく困らせていた。その度にメイドや執事に咎められて、結局お城の中。
それでもお父様やお母様と話せるなら、遊べるなら良かったとは思っていたけれど、でもやっぱり気になっていたのはお城のお外の世界だったの。
お城の中にも星みたいな綺麗な物はいっぱいあった、だって宝石の国だったから。でも私が探してるのはそういうのじゃなくてもっと違う、例えるなら物語の主人公の冒険のような、太陽みたいな素敵なお外の世界。
お城の外はどんな人達がいるんだろう、同い年くらいの女の子はどんな遊びをしているんだろう、お店にはどんなものが売っているんだろう。
そう想像して、考えれば考える程にお外への興味はどんどん大きくなっていく。

だからあの日私は、遂にお城を無断で抜け出した。





「……また、だ。」

目を覚ますと、広がるのはいつもと同じ光景。
また、同じ夢を見た。同じ夢というか、昔の夢だ。なんであの日の夢ばかり見るんだろう。ここまでくると何かの予兆のように感じてしまう。
もう何年も前の出来事だから、夢で思い出してしまうのも相まって、触れたら溶けて消えてしまいそうな朧気な思い出。その夢をここ最近ずっと見続けている。
でも最後まで見れるわけでもなくて、いつもお城を抜け出した所で目を覚ましてしまう。今日もそう。
お城を抜け出した後は毎回見れないため、あまり詳しく覚えてない私は少し気になってしまっているのだ。お父様とお母様に探されて、見つけられてお城に戻ったあとに酷く怒られたのは覚えている。でも戻ったのは夕方だったから私が知りたいのはそこではなくて、お昼の出来事。

「……なんて、夢を操作できるわけじゃないし考えたって仕方ないかなぁ。」

そんな一人言を呟きながら、徐にベッドから起き上がって朝の支度を始める。今日はお父様が私にお話があるらしくて、何やら重要なお話みたいだからあまり遅くならないようにしないと。

寝癖も特に何も無い髪の毛をちゃんとチェックして、服装もチェックしたあと1人頷いて部屋を出た。
廊下で時々すれ違う執事とメイドにおはよう、なんて言いながら足早に食堂に向かった。
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