吃驚仰天
「へぇ、驚いたなぁ。九条ちゃんの彼氏がこんな顔綺麗な人なんて」
「敦葉ちゃんがいつもお世話になってるわぁ」
「…いえ…」

どうしてこうなった、の一言に尽きる。
今アタシの目の前で、朝日奈と榧乃センパイが江雪をアタシの彼氏と勘違いして、ガン見している光景が広がってる。江雪から助けてくれって雰囲気が出てるけれど止められんならとっくに止めてるし、まずなんでアンタが現世に来てんのか聞きてぇんだけど。

「あー…榧乃センパイ、朝日奈、その人アタシの彼氏じゃねぇから」
「あらぁ?わざわざ部活終わりに迎えに来てくれたのに?」
「そうだよ、彼氏でもないのに男がわざわざそんなことすると思う?ボクならするけどね。主にさつきちゃんに」

とりあえず江雪を助けようと口を挟み、彼氏と勘違いされている所を否定したが信じてもらえてねぇ。いや知らねぇよ男の事情なんぞ、そんで私情挟んでんじゃねぇ。
彼氏じゃないのは事実なんだけどな…でも否定して信じてもらったところでどういう関係って言えば良いんだ…?刀と主なんてぶっ飛んだ単語言えるかよ。そもそも審神者やってる事情も言えるかよ、頭大丈夫か心配されそうだわ。
どうしようどうしようと頭を悩ませていると、今まで黙っていた江雪が口を開いた。

「…私と主…………敦葉さんは恋人、ではありませんよ」
「あら?そうなのぉ?」

どうやら江雪自身が否定してくれる気らしい。江雪が言ったらこの2人も信用する────…

「既に契りを結んでいる関係です」
「そうそう彼氏じゃなく……………………はっ?」

自分でも中々素っ頓狂な声を上げたと思う。それ程までに意味のわからない言葉を並べられた。
驚いて江雪を見たがその表情は別にいつもと変わらないように見える。

「契りを………結んでいる……だ、と…?」
「隼ちゃん何キャラかしらぁそれ。…でも契りを結んでいるってつまりもう結婚の約束をしたってことねぇ!敦葉ちゃんったらもう水くさいわぁ!早く言ってくれたらお赤飯をリコと一緒に…はダメだから大我と一緒に作ったのに!」

待て待て待て待て話が飛躍してる、待て。普通に考えて高校生と明らかに大人の男の人が結婚の約束をしてるとかおかしいだろ、時代考えろ今は平成だぞ。平安でも何でもねぇんだよ。

「江雪誤解生むような事言ってんじゃねぇ!契りっていつ結んだよ!」
「敦葉さんが私に名前…真名をお教え下さった時点で契りを結んでいるも同然です…」
「なら蜂須賀にも教えてっから!」
「…浮気ですか…」
「今変な事言うな!どこで覚えた!」

話が全く進展しないどころか最悪な所に転がってる、何これアタシにどうまとめろってんだ。

「結婚の約束をしたってことはキスくらいしたの?」
「こら!隼ちゃんさすがに失礼よぉ!…敦葉ちゃんって口は悪いし態度も悪いけれど、ちゃんといい子だから面倒見てあげてほしいわぁ」
「九条ちゃんはただのツンデレだからね。」
「…つんでれ…ですか…」

榧乃センパイはアタシの母さんかよ、朝日奈は朝日奈でなんでメモ取ろうとしてんだしまえ、江雪は江雪でまた変な単語覚えそうだし。
もうとりあえず一言言わせろ。

「全員話を聞け!!!」






|
novel top