▽無題

赤井妹と美女と天使

憂鬱な兄との共同生活に差し込む唯一の光。
それが何かご存知だろうか。
毎週末に訪れる私のハッピーライフ。
そう、工藤夫人こと工藤有希子さんに会える日だ！！！

「相変わらず気持ち悪いな」
「お前に言われたくねぇよ」

まだかまだかとリビングを行ったり来たりする私に変装した兄が吐き捨てる。
うるせぇお前の変装の方がよっぽど気持ち悪いっつーの。
かの大女優、あのかわいくてお美しい有希子さんだぞ？そんなんそわそわするに決まってんだろ！
年齢など彼女の前では関係ない。
何年たってもお姉さんという呼称が似合うスーパーレディだ。

「来た！」

ご自宅であるにも関わらずチャイムを鳴らすという気遣い…ほんと素晴らしい女性だ。
玄関まで掛けていけば、ドアを開けた先には待ち望んだ美女の姿。
今日もお美しいですね！

「あら、また走って来てくれたのかしら？」
「はい、有希子さんに早くお会いしたかったので」
「髪型崩れちゃってるわよ。そうだ、後でアップにしてあげる！」

いやほんと、クソ兄貴と共暮らしとかマジクソだなとか思っていたけど、こんな美女に会えるのなら悪くない。

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「やっぱり元が綺麗だから更に華やかさが増すわねぇ」
「…有希子さん、これは一体」

兄の変装術ももう完璧らしく、早々にチェックを終えた有希子さん。
髪をアップにしてくれるという話から、何故か着せ替え人形になっていたんですけどどういうことなの。

「目鼻立ちがはっきりしているからお化粧も薄くても十分映えるし、普段は中性的な雰囲気だけど少し着飾るだけでこんなにも美女になるのよ？」

もうやめて、心が折れそう…！
どこのモデルだと言いたくなる位にはおめかしされていた。
有希子さんのお洋服を着せていただくとか罪深いよね、死ぬ？私死んどく？

「折角だからお兄ちゃんにも見てもらわなくっちゃね」
「やめて、有希子さんやめて。お兄ちゃんとかやめて」

さぁ行くわよ。と手を取ってリビングへと連れられる。
ああ、指先まで綺麗なんて流石有希子さん。
私今かの大女優と手を繋いでるんだぜ？どうだ世の野郎ども、羨ましさで咽び泣くがいい。
なんて現実逃避をした所で有希子さんが逃してくれるわけもなく、はい到着！とハートマークでもつきそうなご機嫌な声で兄の前へと押し出されてしまった。
アーメン。
流れるのは微妙な空気だ。
別に仲良し兄妹ではないし、どちらかといえば男兄弟のような仲だというのに、今更妹可愛いわよね？とか言われても困惑するだろう。
私だって困惑してるわ。

「どうかしら？」
「これはまた可愛らしくなりましたね。普段では考えられないような淑女に仕立てていただいたようで…中身が伴っていれば完璧ですね」
「お兄ちゃんに褒められてよかったわね！」

違う、有希子さん、あれは褒めてない気づいて。
沖矢昴口調でそれっぽく言ってるけど、奴の目が言っている。
馬子にも衣装だと。
あれ褒め言葉じゃねぇから。
そして弱みを握ったような空気を醸し出すあれは鬼だ。
今すぐ逃げたい。

「ちょっとこういうのは慣れないので、私は失礼しますね」
「おや、折角着飾っていただいたのにもう着替えるんですか？」
「折角ならお写真撮りましょうよ！」
「ええ、とても素晴らしい提案ですね。僕が撮ってあげますからそこに立って」

この野郎、これが狙いだったな。
中学時代の行いにプラスして、この姿の画像で脅してくる気に違いない。
別にこの格好が母さんにバレるのは問題ないけど、私のメンタルが問題ある。
真純にすら見せたくないというのに。
美女が笑顔で撮ってもらいなさいと私を見る。
女性に言われて断るなど、私にできようか？否、できまい。
結局七五三よろしくピンで写真撮影をされた。
奴の携帯にハッキングしてデーターを必ず抹消することを心に決めたのは言うまでもない。

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「あ、姉さん！」

買い出し帰りに聞こえてきたのは天使の声でした。

「真純っ！久しぶり！！元気？元気だった？あの鳩野郎にはもう何もされてない？大丈夫だからね、お姉ちゃんが必ず殺すから！」
「あはは、姉さんは相変わらず大袈裟だなぁ。帽子も無事だったしいいよ」

よくねぇ。
真純が気にせずとも私が気にするわ。

「そういえば前に昴さんに会った時に姉さんの写真見せてもらったんだ」
「…え？」

綺麗だったよ！と笑う天使。
真純の笑顔はいつ見ても可愛らしい…って違う違う。
今なんていった？

「…写真？」
「うん、有希子さんの服借りたんだって？姉さん美人だしああいう服着ても似合うよな」

嘘だろ。だってハッキングして消したけど！？
あの野郎何してくれてんだ！！
未だに兄であることを言えもしないくせにほいほい接触した挙句写真を見せたとか、まじで弱味握られてなかったら殺してた。
あらゆる技術を駆使して殺してた。

「画像貰ったから吉兄にも送っといたよ！」

ばかあああ！！赤井秀一のばかあああ！！！
家族内でどんどん広まる私の恥ずかしい写真とかもうなんなの？

「あ、ハッキングして消すのはナシだよ？」
「…うん、そうね、お姉ちゃん頑張る」

妹の携帯にハッキングなんてできるわけないだろ。

「折角だしどっか寄ってこうよ！」
「行く！お姉ちゃん何でも奢ってあげる！！」

今は真純とのデートを楽しむことだけ考えよう。

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多分工藤夫妻もコナン君にも回ってると思う。
コナンにも画像をネタにうまいこと使われるんじゃないですかね。

2017/06/06(22:56)