それを見たのはたまたまだった。
相手を切る時の鋭い瞳にどうしようもなく惹かれた。
それから数日間、そいつを見に行っていると、そいつがとんでもない天才だという事が分かった。
(なんっだあの切り返し!なんだあのトリオン量!ありえねぇだろ!?)
久々に自分が高揚するのが分かる。
あいつと戦いたい。あの牙を俺が鋭くしたい。
(あれ、オールラウンダーでもいけんじゃねぇか…?)
あいつがいるだけで戦略に一気に幅が出来る。あの天才に目を付けているのは自分だけじゃないだろう。他の奴等に取られるなんて、想像しただけではらわたが煮えくりかえる。他の奴等に取られるのが嫌なら、自分が取ればいい。
「俺の隊に入らないか?」
そう声をかけたのも自然だろう。その暗く、鋭い目に写すのは俺、俺達だけで良いだろう?なぁ、詰まらないんだろう?その死んだ目で分かる。なら、
「俺の手を取れよ」
そいつの名前は桜木刹那と言った。最年少の11歳で入った天才だ。何でも、家が貧乏で金がいるらしい。
こいつがいればランク戦も上に行けるだろう。興味無いが。
「俺の名前は六花遥陽。六花隊隊長だ。遥陽でいいぜ。敬語もいらねぇよ」
「…じゃあ、遥陽くん、でいい?」
何だろうこの可愛い生き物は
(何故だろう…汚れきった心が浄化されていく気がする…)
刹那は随分と無口だった。人と話す必要が感じられず、喋るのは苦手なんだそうだ。人の気持ちが理解出来ないのが悩みなんだと。
「俺も人の気持ちなんて分かんねぇからいいんじゃね」
「そう、なのかー…」
何だその返事可愛いなおい。
「…遥陽くん?」
おっといかん。思考がトリップしてた。
「他の隊員も紹介するから行こうぜ」
「うぬん」
「え、それ返事なの」
かっわいいわぁ〜…
こいつならばあの気難しいあいつとも上手くやれるだろう。こいつをいれた事でこれからどうなるか、今から楽しみだ。
((他人の気持ちなんて考えるだけ無駄だろう。他人なんて考えるな。俺達の事だけ考えてろ))
(よーっす、新人連れてきたぞオラァ!!)
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