ここはとある海の上。この世界じゃ知らない者など居ないほどに知れ渡っている白髭海賊団、海賊船の一室で、酒や肴をそれぞれ片手に四人の男が顔を合わせるように座り込み、何やら思案していた。

 事のきっかけは数刻前、果敢にも白髭の首を狙ってきた挑戦者である小さな海賊の船長率いるその他クルーを難なくいなし、逆に海賊船からお宝と食糧を奪った後に行われた宴の際、エースから発せられた何気無い呟きからだった。

「最近俺、変な夢見るんだよなァ」

 近くでエースと共に飲んでいたサッチは数瞬の間の後、どんな夢だ? と聞き返す。
 所詮は夢の話だ。大抵の者なら相槌程度に聞いて笑ったりするぐらいで、“変な夢を見る”と聞いただけで興味を持って真剣に聞くものはそうは居ないだろう。
 だけどサッチ自身にも何やら思う事があるのか、そんな様子が何となく伝わってくる。
 エースはここ最近、就寝時に見る自分の夢をかいつまんで、どのような物かを話した。
 
「実は俺も似たような夢をよく見るぜ」

 ははっ、と笑いながらもサッチがそう返せば、別のところで飲んでいただろうマルコとイゾウがやって来た。

「何の話ししてんだよい」

「俺はチラッと聞こえたがァ、夢の話だろ?」

 二人で一緒に来たの様にも見えるが、それぞれが別の方向から来たであろう事がサッチの視界に入っていた。マルコは親父達が居る方から、イゾウはそう遠くないところにでもいたのか、先程のエースの話を聞いていた様だった。

 それから間もなくして、エース、サッチ、イゾウ、マルコの四人は、自分達が何度も似たような夢を見ている事に気付かされる。

 夢の登場人物は、決まって見たこともない知らない女。もう一人は自分。ただそれだけ。
 誰かが女といる夢を見るのではなく、みんながそれぞれ自分と女の二人だけでいる夢を見るのだ。
 女に対して自分が何をしているのか、夢の内容も皆同じ。覚えている限りであげていく女の特徴から、その女も、四人がそれぞれ見る夢の女と一致する。

 甲板から場所を移して、四人は適当に持ってきた酒を飲みながら夢の話を続けた。

 こんな妙な話があるのか?とは、いったい誰が言ったのか。思う事は皆同じ。こんな妙な話等聞いたことが無い。
 一度だけならまだしも、四人が四人共、同じ夢を何度も見るのだ。

 何かの予兆なのか。それとも、偉大なる航路(グランドライン)という、この海域がもたらす不思議な現象の一つなのか。
 そんな疑問を浮かべるも、現時点で正解を導き出せる者は誰一人居ない。
 その内、酒も入っている所為もあってか、次第に話の重点は女に置かれ、夢の内容が内容なだけに、だんだんと下世話な話へと切り替わっていく。

 結局誰も何もわからぬまま、以降も暫く続く不思議な夢に、四人はそれぞれ物思いにふけるのだった。








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