頬が痙攣をした。
眼球の奥が湿り気を帯びる。
我慢をしなければ。堪えなければ。
結婚してもまだ、まだ……友人として傍にいれるだけでも、いいじゃあないか。
いい――本当、に?
幸せそうにしている二人の横でこうしてずっと、叶わぬ恋心を抱き続けることが俺に出来るのだろうか。
数馬がいぶかしんでいる。
「どうしたんだ?」
……唇が、震えた。
何か話さなくては。
突然結婚なんて、これまたどうしたんだよ。
そうか、これでもうあまり二人で遊び歩けなくなるな。
おめでとう――俺も、嬉しい……
数馬を真っ直ぐ見つめた。
唇を、開く。
声を出そうとしたのに……ひゅっ、と枯れた音しか出なかった。喉にその祝福は張り付き、表へ飛び出してくれない。
何度もまばたきをして、涙を誤魔化す。
ああ、どうして。数馬が驚愕をしたように、目を見開いてこちらを見ている。
胸を押さえているその、手。こんなに苦労して、演技をし続けてきたのに。
とうとう罵倒される瞬間がやってきたのか。今まで俺をどんな目で見ていやがったのか! と、嫌悪に満ちた表情をされるのだろうか。
背中に冷や汗が流れる。心臓の音が、やけに遠くに感じられた。
「お前、あいつの事を……いや、嫌っている様子だったし――まさか、俺を?」
そのとても低いかすれ声は、宙を漂い、滲むように消えていった。
何を馬鹿な事を言っているんだ。そんな訳がないじゃあないか。
阿呆だな。ただ驚いただけだって。すまんな。
そんな風に首を横へ――振れない。何故なんだ。
もう苦しくて。胸の中を渦巻くこの感情を、吐き出したくてたまらない。
傍におれなくなるかもしれないのに。それなのに――
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