震えていますね、寒いですか？ 憎い、ですか、俺が……いいですよ。殺したいならば殺せばいい。俺もきっとそう願ってここに来たんです。あなたがバーテンをしているこの、店にね。
思い通りにはならないって、うん、それならば彼から俺を奪ってみます？ 元彼の相手を奪うだなんて、スリリングでしょう？ 手酷く捨てられた恨みを晴らせるし、俺という玩具も手に入るし、一石二鳥じゃあないですか。
ろくでなしを飼育するつもりはないと？ そうですか？ 本気でそう、思います？ あなた……ろくでなしが好きなのに。そうでなくては彼のような相手と付き合えるはずもない。だって、ねぇ。すっごく依存してくるんですよ。こうして、外に出るたびに携帯電話へ何度も連絡をしてきて。あなたも相当依存されたでしょう？ されて、いないって……ああ、悪かった。すまないね。そんなにも俺は愛されてしまったのか。
伝染するのかな。内に竦むこの、どろどろとした、黒いものは。もしかしたら彼は――あなたの元彼は、本来ならばもっと違う顔をしていたのかもしれない。それを俺が変えてしまったのかも、ね。
天気が崩れたのかな。外から嵐の気配を感じるよ。
ああ、電話、鳴り止んだ。これはね、迎えが来る証拠なんだ。GPSがついているからさ。彼、ここに来るよ？ 顔を合わせるのが楽しみだねぇ。こうして、ここで、三人。
きっと血の雨が降る。
END
{emj_ip_0788} 2015 Nosibanodenko
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