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私が“Heart Doll”になってから、5年の年月が流れた。

“Heart Doll”とは、人間の魂…いわば、“心”がお人形に入っていて動くことも喋ることもできる特殊なお人形…。
この技術は“あの人”にしか扱えない代物。

私も…あの人にHeart Dollにしてもらった…。















とある日の夏、たくさんの綺麗で可愛らしいお人形が並ぶお店…そこで店番をしていた少女、ルキ。

「ルキさん!午後のお店番、あたしがする!」

元気に階段をかけ下りてきた幼女…彼女もまたHeart Dollだ。
ルキがこのお店…“Heart Doll専門店”という特殊なお人形の専門店にお世話になる前からいる。
Heart Dollの歳を数える単位はCantante<カンタンテ>…“歌うように”という意味だとあの人に聞いた。

「いいの?」

「うん!たまにはお手伝いするよ?」

彼女が笑顔でそう言うとルキは微笑み返して2階へ続く階段を上って自分の部屋へと向かった。













着替えて外に出ると、雲ひとつ無い青空が広がっていた。

「あつい…」

彼女はただ“暑い”と感じるだけだ。お人形のため、汗をかくという…人間らしい生理現象は起こらない。

「…海のほうにでも行こうかな」

用事もないし…と、ルキは歩き始めた。

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