休憩〜理由〜

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ここは、ルキがつくりだした世界の理に反した空間。
たとえ時間の神・クロノスでさえ、あるいは四神の頂点に君臨する応龍でさえ...なんびとたりとも干渉できない場所。





そんな空間に1人いるのはルキだ。
この空間にルキ以外は存在しない。


「どうして、私は...」


ルキは、静かに呟く...その哀しげな表情。


「ねぇ、どうして私は...世界を見つづけなくちゃいけないの...?」


「人間の心が汚れきった世界、敵を倒しつづける世界、人間が争いつづける世界...もう、見たくないッ…!!」


ルキの瞳には、何ともいえない涙が溢れている。


そこへ突然、声が聞こえた。


「お前が、そう決めたんだろう。そういう“生き方”をすると...」


声の主は遥か昔、ルキが魂の契約をした獣。銀色のオオカミ。


「銀狼」


ルキは小さく、その獣の名を呼んだ。銀狼は、話を続ける。


「昔、この俺に言った。どれだけ魂にキズをきざもうと、転生するたびにどれだけ泣こうとも...皆が笑っていられる世界のためなら...」


「どんな“悪”にでも堕ちる...どんなに赤く染まっても、どれだけ心を黒く染めてもっ...!!」

溢れる涙を悟られないように、ルキは言った。


「大切な人たちを守りたかった.....でも、私は守れなかった・・・・・」


ルキの魂に刻まれし遠い記憶...ルキが知り得る最も古い、遥か昔。


銀狼と契約をする前...ルキが、この生き方を選んだ“大切な人たちとの思い出”。





―――――――

「銀狼☆」


笑顔で、ルキは銀狼の名を呼んだ。


「みんなの戦う理由が同じだってことを、世界に伝えることができたなら...誰も泣かずにすむのかな・・・」


「フッ...そんなことは、この俺には関係ない」


そう言い銀狼は、姿をけした。

















刹那、銀色の優しい風がルキの髪をなでる。


   銀狼の風だ。





「ありがとう」


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