アヴァロンは正に『絵に描いたような楽園』であった。
花が咲き誇り、気候は穏やかで、青々と茂る森に、豊かな動植物。人っ子一人いないこの美しい空間の中央にそびえ立つ最果ての塔
「今更だけど、本当に良かったのかい?」
「でもマーリンにこにこ顔よ?」
「あぁうん、顔に締まりがなくていけないね……」
「最初はね、ちょっと見てみたかっただけなの」
「でもマーリン寂しいでしょう?」
「……さみしくはないよ、私は人間ではないからね」
「村にいるのと、マーリンと一緒に行くの、どっちがいいかちゃんと考えたの」
「わたし、村にいたらきっとお母さんになると思ったの」
「ええと、お母さんみたいになるってこと」
「大きくなったらきっと誰かのおよめさんになって、子どもができて、ヤギを飼って、そうして生きていく」
「目の前で自分の未来を見せられ続けてるの」
ヴィヴィアンにとって、母親とは己の未来視であった。
朝早く起きて朝ごはんの支度をする様、父の仕事を見送って家事をこなす様、そうして夜には繕いをして、弟たちに絵本を読んで朝を迎える。
「でもマーリンに付いていったら、わたしずっとわたしのままで居られるでしょう?」