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『・・・的場は、一門を背負うことにためらいはないの?』

そう何度か尋ねたことがあるけれど、
的場がちゃんと答えたことは一度もなかった

自分が、的場に言われたことに反応できないように

「明翠が気にすることじゃない」

『目のこともあるのに』

ふっと自分の右目を触れて
何か考えて
また手を下に降ろした

『・・・私、的場一門に入ってもいいと思ってる』

「・・・・?」

『なんていうの?就職先みたいなものかな・・・?
 その方が仕事も入りやすいだろうし』

「椿はいいの?」

『・・・祖父が亡くなった時に、一応区切りはつけたつもりよ
 どちらにしろ、家は出ることになるだろうし』

「・・・明が、それでいいならいいんじゃない?」

『・・・・うん』

「別に、急ぎじゃない。おれが継いでからでもいい」

『継ぐ気満々ね』

「当然だ、一門はおれがおとさない」

『・・・・・』


妖との昔の約束が原因で
的場の代々の当主が右目に傷を負う
それが、私は嫌だった
小さい時に現当主の右目を見せてもらったことがあるが
あまりに酷くて、しばらく声がでなかった

私が、どうこう言うべきじゃないのはわかってる
それでも、嫌なものは嫌で

だから、一門に入れば守れるかもしれない

・・・傷だけならまだいい

的場がいなくなるのは、とても・・とても、嫌だった


どちらにしろ、椿には残れない
今の椿に私がいたら
家族が巻き添えを食う可能性がある

それくらい、私の妖力が強いことくらい
自分でわかってる
そのことを考えても、やはり高校を卒業したら・・・


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