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そろそろ、どうにかしなければならない
それは、わかっている
わかっているが手段が見つからない
無理やり力で押して、なんとかなる問題ではない

数日して、食事をするようになったが
粗方は戻してしまうようで、つらそうにしているのを何度も見かけた

何も話さない明翠に苛立ちがつのる
そんなに自分では頼りないだろうか
信頼に値しないのだろうか・・・なんてことも柄にもなく考えたが
彼女のことだ
人に迷惑をかけたくないのだろう
それに話すことは、考えることにもつながる・・・

「何も聞いてませんか?」

「それで私を頼るのか」

隠すこともしない大きな気配に近づいて声をかければ
大きな黒狼が自分の前に現れる

「私よりは、話しやすいかもしれないと思いまして」

「珍しいな、自信がないとは」

「私だって、そういうときくらいありますよ」

心外だと付け加えれば、ふんっと鼻で笑われる
別段仲がいいわけではない

「明翠は、助けてほしくなかったでしょうね」

「・・・・本人に聞けばいいだろう」

「聞いたところで、助けてほしくなかったと言う明翠だと思いますか?」

「・・・・思わないな」

「・・・・わかりました。もし何か聞くことがあったら教えてください」

「1つ聞くが」

「はい?」

「明翠は、まだ術は使えるのか?」

「・・・それは」

それは、わからない。まだ試していないし
試せるだけの体力があるかもわからない

「それから、もう1つ」

「?」



“妖の時間は人の時間とは違う
人の一生を一瞬に感じるほどに妖は長い時間を過ごす
明翠にとっての4年は、酷く短い時間だ”
そう言った雪の言葉を思い出しながら邸に足を進める
学ランでも引っ張り出してみるかなどという考えが浮かんだのは
疲れているからだろうと頭を振る
4年前の自分を思い出そうとしても酷く遠く感じた


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