おおかみとスキンシップ


魔法薬学の前の一件からシリウスが煩い。彼が言うことには僕と彼女の距離感がおかしいらしいが、美人なガールフレンドをとっかえひっかえしてる学校一のプレイボーイに言われたくはないというものだ。ジェームズとピーターと合流した時まで話し続けようとしたものだから、思わず機嫌の悪い顔になっていたかもしれない。(「睨むなよ!」「睨んでないよ」)
その時はそれで済んだし、シリウスのことだから一晩寝れば忘れてすっかりジェームズとの悪戯に興じることで頭がいっぱいになると思っていた。それがどうして、何故だかやたら視線を感じる。それもリズと一緒にいるとき。

「………ねえリーマス、これは私のうぬぼれじゃないよねそろそろ?見てるよね?絶対見てるよね?」
「うん、見てるね」
「なんで? イケメンは見る専だから見られたいとは思ってないんだけど……」
「僕が女の子と仲良くしてるのがよほど珍しいらしいよ」
「そうでもないでしょリーマス優男だし」
「その言い回し不快」
「ごめんごめん。えー?ていうかブラック意外と友達への愛重くない? もしかしてむしろソッチなの?」
「やめてくれよ………女遊び激しいからそれはないと思うよ」
「冗談だから死にそうな顔しないでよ………彼も君も女の子が好きなんだと思ってるってば…………」

シリウスからの視線が痛いせいかだんだんとお互い小声になっていくため、顔が近づいていく。それが彼の気に障ったのか、シリウスがガタリと腰を浮かした。リズも肩を揺らす。

「ええ〜……………私なんかした〜……………?」
「何もしてないから無視していいよ」
「怖いよイケメンの真顔………射殺さんばかりの視線だよ……………」
「そのうち飽きるから」

ね、とすぐそばにあった鼻をつまむ。ふごっ!?と色気のない声を出してリズは僕の腕を叩いた。苦しいのかなんなのか意外と強く叩かれて若干腹が立ったので、空いているもう片方でほっぺたも引っ張ってやる。結構柔らかいなぁ。

「ででででデブじゃないです〜!標準です〜!」
「まだ何も言ってないし君が平均じゃないところってあるの?」
「言う気じゃん!ほら!顔に「ほっぺたわりと柔らかいな」って書いてあったもん!」
「よくわかってるじゃないか。しかもそれ太ってるとは言ってないよね」

リズ僕の気がすむまで開放されないと諦めたようで、されるがままにほっぺたを差し出している。時折ぐいとひっぱると抗議するように眉根を寄せ、三回目くらいで向こうもこちらに手を伸ばしてきた。

「いった!傷痕狙うことないだろう!?」
「人の顔散々好きにしといてよく言うよ!」
「だからって一番新しいやつ……」
「ほんっと何したらこんなところにこんなに傷残してこれるの? ペティグリューよりはどんくさくないんじゃなかったの?」
「君だって腕とか火傷痕だらけじゃないか」
「ぎゃっ!アメリアが気に病むから隠してるのに!」
「なんだかんだスミスに優しいねリズ」
「リーマスにも優しいでしょ?」
「せめてその手をどかしてから言いなよ いてて」

お互いの頬を引っ張り合いながらという謎の状況でぐだぐだと喋っていると、いつのまにやら近くに気配があった。シリウスだ。

「〜〜〜〜〜〜お前ら絶対おかしい!」

変な顔のシリウスが僕とリズのローブを引っ掴むとべりっと引き剥がし、そのまま僕を引きずって部屋へ向かう。「ちょっと、」と抗議の声をあげてもロクな反応が貰えそうにないので、諦めてリズに手振れば、口パクで「やっぱり、」と言ってきたので思いっきり顰め面を向けてやった。